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藻バイオ燃料 カナダモ実用化へ 琵琶湖で大発生

湖岸に押し寄せる枯れたカナダモ。悪臭などの苦情が多い=大津市下坂本(滋賀県自然環境保全課提供) 琵琶湖で大量発生している外来水草のカナダモから大量のバイオエタノールを精製することに、京都大学エネルギー理工学研究所の渡辺誠也助教らのグループが成功した。実用化を目指し、4月から国のモデル事業として実験を開始しており、渡辺助教は「カナダモは琵琶湖で年間2億円をかけて処理されているが、水草をエネルギーに変換できれば、各地で繁殖しているカナダモによる湖沼の環境問題も解決できる」と話している。

 カナダモは、琵琶湖では昭和40年代半ばから大量発生。漁業の妨げになるほか、枯れて湖岸に打ち寄せられると腐って悪臭を放ち、水質や景観を悪化させている。

 現在バイオエタノールは、主にサトウキビやトウモロコシなど食用穀物から精製されている。しかし燃料に転用されることで食糧価格の高騰を招くなど問題が生じていることから、渡辺助教は琵琶湖の厄介者であるカナダモに着目した。

 一般にバイオエタノールは、植物が持つ糖質を発酵させ、蒸留して精製されている。穀物の糖分は酵素で簡単に発酵するが、カナダモなど水草の糖分は発酵のスピードが遅く、エタノール化は困難とされてきた。

 渡辺助教は、遺伝子操作で作り出した新たな酵素を水草の糖分に加えると発酵が早く進むことを発見。従来の2倍の早さでバイオエタノールが生成できる技術を確立した。

 現在は水草の刈り取りを行っている三東工業社(滋賀県栗東市)や水草の糖分抽出に取り組んでいる滋賀県東北部工業技術センター(同県長浜市)とともに、実用化に向けた研究を実施。経産省のモデル事業として京大宇治キャンパス(京都府宇治市)で行っている実験では、今年度水草100キロから300ミリリットルのエタノール生成を目指している。

 カナダモの大量発生は、アフリカ最大のビクトリア湖などでも問題になっており、バイオエタノールの実用化研究が進めば、世界規模で水草が有効活用される可能性もある。

 バイオ燃料の政策に詳しい東京大学アジア生物資源環境研究センターの井上雅文准教授は「新しい発想でのアプローチでカナダモ被害の根本的解決につながる取り組み。琵琶湖での事業は注目度も高く環境問題への貢献度も大きい」と評価している。

【写真説明】湖岸に押し寄せる枯れたカナダモ。悪臭などの苦情が多い=大津市下坂本(滋賀県自然環境保全課提供)

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