父・大二郎さん(左)、母・裕美子さんも感激した表情を見せる=ワールド記念ホール
「WBC世界バンタム級王座戦12回戦」(14日、神戸ワールド記念ホール)
WBC世界バンタム級王者・長谷川穂積(28)=真正=が、同級4位のネストール・ロチャ(26)=米国=を1回2分28秒、TKOで退けて9度目の防衛に成功した。
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最高にカッコいいシーンだった。リング上での勝利インタビュー。無傷で勝ち名乗りを受けた王者は、真っ先にリングサイドで声援を送り続けてくれたがん闘病中の母・裕美子さん(54)を見つめた。「母に元気をあげる試合をしようと思ってた。勝てたんで、良かったやろ?」。息子の優しい呼びかけに、母は震える手で目頭を押さえながら、コクリとうなずいた。
今年2月に粒子線治療を受け一度はなくなったがんが、5月の検査でまた肺に3個見つかり、先月10日に地元西脇市の病院に緊急入院。28日に退院したばかりだが、今月3日には体調が悪そうな息子を激励しようと神戸市のジムを訪れた。
母の愛に力を受けた息子の完ぺきな勝利を見届け「寿命が5年ぐらい延びた感じです。本音を言うと、もうちょっと(長く)見たかった」と裕美子さん。息子の勇姿が、今回もまた何よりの特効薬となった。