9回、ロハス(右)の右フックを浴びる粟生=後楽園ホール
「WBC世界フェザー級王座戦12回戦」(14日、後楽園ホール)
王者・粟生隆寛(25)=帝拳=が、挑戦者エリオ・ロハス(26)=ドミニカ共和国=に3-0の判定で敗れ初防衛に失敗した。
距離感がつかめなかった。右ジャブでけん制し、左ストレートを打とうとすると挑戦者の右ストレートが飛んできた。中盤まで試合を支配され、9回に、ようやく左ストレートをヒット。挑戦者をぐらつかせて会場を沸かせたが、これが粟生の唯一の見せ場だった。
初防衛戦でいきなりランク1位の挑戦者を自ら選んだ。指名試合の期限は12月12日のため、ランク下位の選手を選択することも可能だったが、プライドが許さなかった。「常に最強の挑戦者を迎えてこそ世界王者」の信念は動かなかった。
ベルトを失い、海外進出の夢も大きく後退した。この日、元世界3階級制覇のマルコ・アントニオ・バレラ(メキシコ)が試合を観戦。あこがれの元王者の前で世界の「アオウ」をアピールしたかったが、現実は厳しかった。
「率直に負けました。うまかったですね。カウンターを合わせるつもりだったけど、思ったよりもこなかった。パンチもテンポも速く組み立てにくかったです。自分のボクシングが出来なかったことが敗因です」。素直に敗戦を受け入れ、冷静に分析した。
王者として、この日、挑戦者から学んだものは多い。これから新たなスタートを切ることになる25歳は言った。「再戦?やってくれるのであればもちろんやりたい。でも、その前に、僕がもっと強くならないと」。試練を乗り越え、再び世界の頂点を目指す。