「WBC世界バンタム級王座戦12回戦」(14日、神戸ワールド記念ホール)
WBC世界バンタム級王者・長谷川穂積(28)=真正=が、同級4位のネストール・ロチャ(26)=米国=を1回2分28秒、TKOで退けて9度目の防衛に成功した。日本ジム所属選手の連続1回KO防衛は史上初。4連続KOは具志堅用高(本紙評論家)以来31年ぶり2人目で、日本ジム所属選手の連続防衛でも勇利アルバチャコフと並ぶ歴代2位の快挙となった。
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7・14、神戸のリングに歴史が刻まれた。V8戦に続く秒殺劇で、世界戦での連続1回KOは日本ジム所属選手としては史上初。4連続KO防衛も31年ぶり2人目。長谷川がよく口にする「オレは神の領域」も-、もはや冗談には聞こえない。
互いに手数が少なく、静かな立ち上がりだったが2分すぎ、試合は突然動いた。王者がノーモーションの左から右フック。アゴを打ち抜かれた挑戦者が前のめりに倒れ込む。立ち上がった挑戦者に猛然とラッシュし2度目のダウン。再び立ち上がったものの脚の定まらぬロチャに、レフェリーは試合の終了を告げた。
大歓声に包まれた王者の顔には一つの傷もない。それどころか「一発もパンチもらってない」。今世界戦に向けて、芸術的なディフェンスとうたわれた元WBC世界Sフライ級王者・川島郭志の試合をビデオ研究。「やっぱり打たれへんのはええな。これで攻撃力もあるのが理想。でもそんなんできるやろか」と語っていたが、まさにその通りの試合をしてみせた。
9度目の防衛は日本ジム所属選手として歴代2位タイ。どこにも死角はないように見えるが、「減量はやっぱりきつい。アップ中に脚が動かなかった。12ラウンド戦えるのか…、次に試合するのが怖くなる」。4年以上世界の頂点に立ち続ける体には、確実にダメージが蓄積されている。
2カ月前には空港で貧血を起こし、倒れた際に頭を打った。減量中は立ちくらみを防ぐため、壁に手をつき一呼吸置くまで動けなかった。さらに試合前には左肩が腫れ、水を抜く治療を受けたという。決して万全ではなかったが、そんなことはみじんも感じさせぬ圧勝ぶり。絶対王者の絶対王者たるゆえんを見せつけた。
それでも「(防衛回数も連続KOも)どっちも2位。全然おもんない(面白くない)」と不満げ。前人未到の金字塔を打ち立てるまで、決して歩みは止めない。