謎のアフリカ人が、前触れもなくピッチに立っていた。10対10のミニゲームでは黄色いビブスの控え組に入り、MF林のゴールをアシスト。褐色の肌、細身の筋肉質、身長1メートル70前後。一体、誰なのか?
「2週間にわたり練習させる予定です。アフリカ出身の18歳。タンコ・コーチと同じ国の出身。それ以上は言えません」
フィンケ監督は詳細を伏せた。元ガーナ代表のタンコ・コーチの知り合いで、前日13日に来日したばかり。FW、MFと攻撃的なポジションをこなせる。クラブ側から事前の告知はなし。それどころか、選手も知らなかった。MF高橋は「朝起きたら寮でごはんを食べていた」。FWエスクデロは「ロッカールームに普通に座っていた。“ハロー”と声をかけた」と困惑ぎみ。
なぜ、そこまでひた隠しなのか。フィンケ監督は語気を強めた。「バルセロナ、チェルシー、マンU、リバプールはアフリカ大陸を駆けめぐり、将来性のある選手を探している。報道されると各国のクラブがやってきてしまう」。昨季無冠の浦和は約10億円の収入減。「完成された選手は取れない」という現状では、無名の原石を磨くしかない。信藤チームダイレクターも「いざ契約というとき、変なの(悪徳代理人)がいたら困る」と報道陣に理解を求めた。
謎多きガーナ人は時差ボケにもかかわらず、一瞬の加速力は目を見張るものがあった。彼が誰なのか、ますます気になる。(浅井武)
★クラブハウスには謎の練習生に関する未確認情報が飛び交った。ある選手は「名前を聞いたらファイサとか、フェイサとか言っていた」と明かした。前夜8時に寮で自己紹介する予定だったが、遅れて同11時に到着。数人の部屋を訪れ、あいさつしたという。また「U−17ガーナ代表だった」という本人談もある。同代表は07年U−17W杯でブラジルを下し、ベスト4に入った。