2009-07-13
■[裁判傍聴記]主犯が釈放されてるのに、4日間のバイトは否認したためにさらに2ヶ月勾留される美しい国、日本
だいたい現実の裁判ってのは江戸時代のお白洲と大して変わってなくて、検察官がお前がやったんだろ、と言い、被告人が反省してます、と言い、弁護人が寛大な判決をお願いします、と言い、裁判官が求刑の7掛けの判決を出すと相場が決まってる。
こういう裁判だとベルトコンベア式に進んでいくんだけど、そのレールから外れると、どうにもおかしなことになる。
今日は午後から2件傍聴して、この2件ともが否認事件という珍事。
早朝で朝日が信号に光って青に見えたという主張で、弁護人が途中で変わったらしい。被告人と揉めたんだろうな。被告人・前弁護人2人ともおばさんで性格きつそうだもん。
判決では数学的見地から計算して、百何メートルの間に最低2回は信号が朝日に当たってない角度になったはず、つーことで有罪。
そして今回のメインはもう1件の児童ポルノ法・猥褻図画販売目的所持。
平成21年(わ)102号 児童ポルノ法、猥褻図画販売目的所持
7月9日にこの事件の主犯の判決公判を見てて、主犯がとっくに執行猶予付きの判決で釈放されてるのに、共犯がまだ公判中。
http://d.hatena.ne.jp/RRD/20090709/1247108204
この事件を要約すると、児童ポルノを含んだ裏DVDをネット通販してた、という話。
主犯はパチンコ屋で知り合った氏名不詳と組んでたんだけど、足を洗いたい。氏名不詳にそう言うと、後釜を2人連れて来い、と言われてた。で、一人は見つかって、仕事も教え込んだ。
一方そのころ業務多忙でそれ以外にバイトを3人使ってた。被告人は4人目のバイト。関係で言うと主犯の友人の奥さんの弟。
働き始めて4日目に逮捕。
この被告人は身内だから金の管理なども信用できる、後釜を任せようとしていた、と主犯の供述調書があることなどから、猥褻図画販売目的所持で起訴、今日はこの主犯の証人質問だったんだけど、この証人が大活躍してくれて、なかなかスリリングな公判になった。
供述調書は録取、つまり警察官なり検察官が尋問して、それを被疑者なり被告人なりの一人称の作文に置き換えるスタイルをとっている。その際に、公判で検察に有利になるように巧みに言葉遣いを変えたり、内容の細かいところを作ったりする。
そして往々にして、その言葉尻や些細な内容が決め手で量刑が大きく左右されるんだけど、実際のところ公判でこの供述調書をひっくり返すのは至難の業だ。
なぜなら裁判官は調書が正しいことを前提に誘導するように質問をしてくるから。調書を否定しても、手を変え品を変え言葉を変え、何回も同じことを聞いてきて、その中で多少ニュアンスが違うことを言っただけで公判での証言は信用できない、と来る。
さらに、文章読解力に優れている裁判官は平気で重文の上に複文を重ねるような代名詞を多用した長文で質問してくるから、普通の人からすると3回も4回も聞き直さなきゃ理解できないし、そこでうっかり検察に有利なように誤読して答えようものならそのまま、被告人に有利なように誤読して答えようものなら即ツッコミ。
わけわからんし、面倒。それを今日の証人は言うべきことはきっちり言うし、理解できなければ何回も聞き返すし、本当に良く頑張った。
いい金になる仕事とは言ったけど、裏の仕事とは言ってないのに書かれた。
DVDが被告人の所有物という認識はないと言ったのに、それでも「所持」になるんだと言われてそのように供述した。
身内なら金の面で信用できるだろ、と聞かれたのでそれはそのとおりだと答えたら、信用できるから後釜に、と解釈された。
大雑把に言えばたったそれだけのことを主張するだけで小一時間責められる。けど証人の主犯も譲らない。
もともと被告人が主犯の身内だということで見込みで起訴しちゃったんじゃないかという感じ、供述調書の信用性が音を立てて崩れていくのがよく分かった。
最後は若い女性検察官が質問中に棒立ちになる時間が何回もあって、いわゆる「涙目状態」だった。途中からほかの検察官が傍聴席に来てて、そこに向けて盛んに助けを求めるように視線を飛ばしてたけど、どうにもならん。
とにかく立て直そうと休憩を挟んで、傍聴席にいたハゲの検事と話をして、結局時間稼ぎをして次回公判に補充質問を、と言ったところで小川弁護士が一喝。
主犯がとっくに釈放されてるのに4日間のバイトはまだ勾留中、その長期勾留理由が「否認事件ですから」なんて理由にならない。なにより新証言が飛び出したわけでもなく、大筋では証人も被告人も供述調書のとおりの証言をしてる。ただヒッカケようとしたキーワードを証人が踏まなかっただけで。
言葉尻で裁判を動かそうという姿勢が間違ってるのに、言葉尻を捕まえられなかったから「ちょっと待った」、って、どうよ?
結局証拠整理などの都合もあって次回は8月27日13:20で結審の予定との。小川弁護士は無罪の主張をしそうだ。
で、被告人はお盆休み挟んで、おそらく9月の判決まで捕まったままなわけだ。
この国では、正当性を主張するともれなく長期勾留が付いてくる。その理由は「否認事件ですから」
- 2009-07-12 刑事事件専門blog 刑事裁判の流れと手続き 9/71 12%
- 2009-07-14 奥村徹弁護士の見解(06-6363-2151 hp@okumura-tanaka-law.com) 8/104 7%
- 2009-07-12 奥村徹弁護士の見解(06-6363-2151 hp@okumura-tanaka-law.com) 7/89 7%
- 2009-07-14 日暮れて途遠し 5/88 5%