◆ 「でっかい社名」で勝負
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ワールドの創業者で前社長の畑崎広敏(66)は、一代で会社をアパレル大手に育てたが、原動力となったのは、就職試験の失敗だった。地元の兵庫県・淡路島の高校に通い、都市銀行を受けたが、最終面接で落ちてしまった。恩師に頼み込んで紹介してもらったのが、神戸のニット卸だった。1955年12月、就職のため淡路島から船に乗った時、「おれは学校時代は負けたけど、社会では絶対勝ってやる」と誓った。
就職先は、わずか20人ほどしかいなかった。がむしゃらに働く畑崎は在籍した4年間で、「やらなかったのは社長だけ」と、企画から営業までをこなした。
だが、「大学に行った同級生が社会に出てくる。独立して勝負したい」と21歳の時、上司だった木口衛(79)(現相談役)とワールドを創業した。社名は、身長1・6メートルほどの小柄な2人が、「名前はでっかく」と名づけた。
2人とも勝ち気な性格で、「合う訳がない。すぐに辞めるで」とうわさされた。だが、ぐいぐい引っ張る畑崎と、行き過ぎを抑える木口のコンビは意外に相乗効果を発揮した。当初は順調だったが、大きな落とし穴が待ち受けていた。
(敬称略)
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