きょうのコラム「時鐘」 2009年7月14日

 解散風に騒然とするなかで、脳死を人の死とする改正臓器移植法が成立した。3年後の見直し規定があるのに、12年もほったらかしにされた

残りの重要法案には、黄信号がともる。北朝鮮への物資出入りを監視する貨物検査特措法は、参院審議入りのめどが立たない。国連決議が求める公海上での貨物検査や禁輸品押収が、現行法ではできない。そのための法整備で、効果を疑問視する声もあるが、対北制裁で各国と足並みをそろえる必要がある

治に居て乱を忘れず、という。北陸には、忌まわしい拉致事件が暗い影を落とす。能登半島沖の領海に2隻の偽装漁船が現れ、護衛艦が追跡劇を演じたこともある。対岸の無法に備える大切さは、よく分かる

「治に居て」は、永田町でも使われるが、もっぱら、選挙準備を怠るな、という意味である。「常在戦場」も多用される。緊張する国際関係に身構えるというのでなく、自分のクビを必死で守れ、という戒めである

重要法案の始末もつけずに、「政権選択」の絶叫を聞かされることになるのだろうか。臓器移植法改正がはかどらなかったのも道理である。