昨年12月15日。大阪と奈良の境にある金剛山を妻(44)と登った翌朝だった。左足に体重をかけると、骨の髄まで響く痛みが太ももを襲った。
仕事を終えてクリニックに立ち寄り、骨盤近くの大たい骨に卵大の空洞があるのがレントゲンで見つかった。「良性腫瘍(しゅよう)と思われるが、手術は必要」「入院は手術後1カ月程度」と医師に言われる。手術と聞いて絶句したものの、「良性ならば」と安心もした。
クリニックからの紹介状を持ち、正月明けの1月5日、国立病院機構大阪医療センターの整形外科で初診を受ける。ところが医師からは「悪性の恐れも。転移も否定できない」と告げられたのだ。
「悪性であれば人工関節を付け、抗がん剤治療で半年間入院」「非常に骨折しやすい状態。折ると悪いものが体に広がる」
心の準備ができていなかった。脇がじっとりと汗ばんでいた。そばにいた妻の顔も血の気がうせていた。
会社には電車で通っていたが、衝撃で骨を折るのが怖い。上司に説明し、翌日から会社を休み、1週間後の入院に備えた。<社会部・佐々木雅彦(43)>
毎日新聞 2009年7月14日 地方版