趣旨と参加に関して

当財団の設立について

一般財団法人 夏目漱石
設立趣意書


 私たち日本人に文明開化が訪れたのは、150年ほど前のことです。時代が劇的に移り変わり、日本人が世界に目を向け始めたのもこの頃のことです。様々な風習や言語が輸入され、外国人が来日し、そして日本は近代国家となるべく扉を開き、今や世界における経済先進国となりました。ところが現在の経済的進化をとげた日本人には、日本人が大切に育み守り続けてきた道徳や文化を重んずる心が失われつつあります。私たちは今、新たな時代の移り変わりに遭遇し、日々翻弄される足元を見つめると、それは150年前の明治の日本人とまさに同じ境遇にいることに気づきます。時代はくり返される、とはよく耳にする言葉ですが、私たちはこれまでの歩みを振り返り、日本人が昔から本来暖めてきた文明と文化を取り戻すために、21世紀の今、新たな近代を乗り超えるような文化形成の創造こそ求められているものと確信いたします。
さて、私たちは、世界の現代社会に必要な潤滑油として、「文(ぶん)」は時代を貫く羅針盤として人々の大事な財産だと考えております。例えば、文明・文化・文藝・文学、これらを軸にして創り上げるものには、揺るぎない信念が感じられます。現代の日本人が、この揺るぎない信念をもう一度自らのものとすべく、明治時代を駆け抜け、欧米近代化の真似ではなく、日本に根付いた近代化を築こうとし、地球環境の悪化を始め様々な問題をもたらした先進諸国の将来を見透していた、日本が生んだ真の文化財である夏目漱石の下に新たに参集したいと考えます。
私たちは、空洞化した現代社会の道しるべとして、生きることに結びついた「文化を基盤にした財団法人」を設立し、地球の人々がこれからの文化をどのように創造してゆくべきか、新たな展望と目標を掲げ、新たな創造の果実を発信して行こうと考えております。
私たち財団法人 夏目漱石は、世界に感動と潤いのある人間の安全へとつながる本来の豊かさを提示し、そして、多くの人々への希望と目標に成り立ち得る基盤を築きながら、文化活動としての教養・科学・芸術に携わるあらゆる地球上の人々と手に手をとって、革新的な手法で21世紀の地平へ素晴らしい文化を発信していきたいと考えております。

2009年4月1日
一般財団法人 夏目漱石