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「道開けた」「拙速」 患者家族の反応二分 '09/7/14

 「臓器提供の増加につながる」「議論は尽くされたのか」―。13日、成立した改正臓器移植法(A案)に、患者家族の反応は真っ二つに分かれた。同法成立から12年を経ての改正。臓器提供の条件を緩和する内容に、推進派は「道が開けた」と安堵あんどした様子。一方、反対派は脳死を一般的に人の死とする内容に「拙速」と表情を曇らせた。

 「納得いかない結果」。参院議員会館で採決後に開かれた反対派の記者会見。娘が2歳8カ月の時に脳死と診断され、亡くなるまでの約2年を過ごした中村暁美なかむら・あけみさんは、声を振り絞った。「たくさんの時間をかけて深い議論や審議をしていただけたのか」

 国会審議では、臓器提供を「社会資源」や「自給自足」と言う議員もおり、やるせない気持ちになることも。「人を人と見ない言葉が飛び交う中で脳死を人の死と決めていいのか憤りがある」

 臓器移植法改悪に反対する市民ネットワーク事務局の川見公子かわみ・きみこさんも「人の生死を決める法律が、ボタンを押してあっという間に決まってしまった」と不満を隠さない。審議で積み残された課題を話し合うため、新たな「脳死臨調」の設置などを求めるつもりだ。

 一方、A案支持者の記者会見には、患者団体や医師ら約10人が出席。日本移植者協議会の大久保通方おおくぼ・みちかた理事長は17年にわたり国内の臓器移植推進に取り組んできた。「(可決時に)泣かないようにしようとしたが涙が出た。こんな素晴らしい日を迎え感激している」と声を震わせた。

 心臓移植手術を受けるために渡った米国で息子を亡くした横浜市の中沢啓一郎なかざわ・けいいちろうさんは「息子も法案の行方を見守っていたと思うが、安心してほしい。闘病生活で遊べなかった分、天国で遊んで」と遺影に語り掛けた。




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