自民・公明両党が過半数を割り込んだ東京都議選の結果は、石原慎太郎知事の都政運営に大きな影響を与えることになりそうだ。第1党となった民主党は、選挙が近づいた段階から野党色を強めてきており、今後の都政は波乱含みだ。
当面、知事と民主の対立が最も先鋭化しそうなのは、築地市場の移転問題だ。移転先に予定されている江東区豊洲地区の土壌が化学物質で汚染されていることが分かり、移転反対論が勢いづいた。
都は586億円をかけて土壌を浄化する方針を示し、来年度の当初予算案に関連工事費を盛り込む見通しだ。民主は「強引な移転」と計画に反対し、選挙戦でも「危険な場所には移させない」(菅直人代表代行)と訴えた。
経営難の新銀行東京については、自公が400億円の追加出資に賛成し、民主は反対した。民主は選挙のマニフェストでも「存続反対」をうたった。2016年五輪の東京招致については、自公は賛成、民主は「大筋で賛成」で、招致自体を巡る対立はない。
一方、政策の大きな方向性には、ずれがある。民主は病気やけがの際の救急搬送時間の短縮や出産育児一時金の拡充など、暮らしや福祉分野中心の政策を推し進めようとしている。一方の石原知事は、どちらかといえば都市整備に力点を置く。
選挙期間中、危機感を募らせた石原知事は、候補者の応援演説で「おかしな風が東京にまで吹いてきた。とんでもない番狂わせ。いったい都政のどこに問題があるのか」と、都議選が国政の影響をうけることへのいらだちをあらわにした。
しかし、都議選の結果のすべてが、国政の影響だったとは言えない。新銀行東京や築地市場の移転問題は、石原知事の政策のつまずきを有権者に印象づけた。知事が今期の最重要政策と位置づける五輪招致も、都民の大多数が賛成しているとまでは言えない。毎日新聞が告示後の4、5の両日に実施した世論調査によれば、石原知事の支持率は45%と、初めて5割を切った。
民主は第1党になったものの、単独で過半数を取ったわけではない。都議会の主導権を巡り、石原知事の動向を見据えながら、各党間の駆け引きが始まりそうだ。【市川明代】
毎日新聞 2009年7月13日 東京朝刊