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2009-07-11

涼宮ハルヒの憂鬱 見えてきたエンドレスエイトの同期演出

涼宮ハルヒの憂鬱エンドレスエイト4話目。またもやカウンターを喰らってしまったのだけど、少しばかり数字の考察という名の妄想を。

まず、ループを見せられた2話目が15498回目に該当、3話が15499、4話の今回が15513回目だ。2話→3話の間は繋がりがあるが、4話にはなく14回飛んでいる。劇中の期間が2週間、14日。視聴者が7日過ごした間に、196日経過している計算。196日ということは28週、自分達と比較して、全て記憶している長門有希は28倍の時間を体験したはず。そして「エンドレスエイト」の4話目だから、「孤島症候群・後編」から数えて4週、28日間「エンドレスエイト」している。

さらに196日という時間、たとえば2009年の196日目は一体いつなのかというと…7月15日。翌日、7月16日深夜はハルヒの放送日だ(厳密には17日になりますが)。次回がエンドレスエイトの5話目だと仮定するならば、196日目、7月15日で一旦区切りが付き、197日目、こちらから見た7月16日は「繰り返すエンドレスエイトの始まり」に同期する。

かなり無理矢理ですが、奇妙な一致が見え隠れする数字や日付。偶然で済ますにはあまりにも出来すぎだ。ここまで考えて15513回目なのか、単なる深読み妄想なのか。しかし、4話は2,3話と比較して明らかに差異が見られ、

  • キョンハルヒの言葉を先読みして口にする
  • 夏空の雲、飛行機のイメージ映像が挿入されている
  • 8月31日、キョンの独白が「任せりゃいいか…」から「何とかするしかないか」へ変化

細かく見れば他にもありますが、大きな変化はこんなところでしょうか。

アバンから、キョンハルヒとの通話中、「自転車に乗っていくんだろ」と言葉の先読みを口にする。ところが、記憶はリセットされる前提があり、既視感を越えて「具体的な言葉で返答する」行為は、既視感が大きく漏れ出し、飽和しかかっている状態の表れではないかと思う。この状態をアバンで見せる、つまり4話は飽和状態の既視感を表現する意図があったように。

具体的な例で言えば、プールサイド長門を見て既視感に駆られるキョン

まただ、この感覚。こんな光景を前にも見た気がする。なんとなく長門が退屈そうにしているような。そう、それでハルヒはこんなことを言い出すんだ。

ま、よくあることさ、デジャビュなんて。(エンドレスエイト 2話)

この感覚。こんな光景を前にも見た気がする。なんとなく長門が退屈そうにしている様子で、そこへ。そうハルヒがやってきて、こんなことを言い出すんだ。

ま、よくあることさ、デジャビュなんて。(エンドレスエイト 3話)

アイツ、あんなとこへ居たのか。なんだ、1人で何をやって…なに、なんだこの感覚。俺は前にもこんな感覚を、こんな長門を見たような。ハルヒ。あ、それでたしかハルヒはこんなことを言い出すんだ。この2人があたしの団員よ。何でも言うこと聞くから…

予知能力で備わったのか俺は。でもないらしい。ま、たまたまだろ。よくあることだ、デジャビュなんて。(エンドレスエイト 4話)

具体性を帯び、会話の内容を予見。飽和状態からなのか、記憶を少し引っ張られているようにも感じられる。杉田さんの演技が回を追うごとにシリアスになっていき、4話は緊迫感を煽るのが非常に巧かった。キョンの予見は視聴者も同じように、4度見せられれば次の言葉を覚えていてもおかしくない、シンクロの演出も当然あるかと思います。

次に意味深なイメージ映像ですが。

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これもアバンパートからキョンの既視感として浮かんだ映像。

既視感の象徴として扱われているのは明白で、

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既視感の欠片をキョン視点から様々な形で見せる、いや、キョンが見ている映像だ。では、これはどういう意図があるのか考えてみると。

エンドレスエイトはループしているのだから天候は変わらない、端的に言えば同じ空を何万回と見たことになり、既視感が飽和状態であることを踏まえれば、夏空という象徴的な風景に何か違和感を覚えるのは当然でしょう。飛行機が見えるのも、同じ時間帯に同じ場所へ着ているのだから、目に止まるのは不思議じゃない。

そこへ朝比奈みくるが偶然、「飛行機と雲がプリントされたTシャツ」を着ていた。朝比奈さんは恐ろしい数の服を持っているみたいだけれど、無限ではないと思われるのでこのTシャツも何度かは見たはずだ。まあ、もしかしたら15513回目限定で買ったものかしれないけど、この話数で着ていた事実は揺るがない。キョンがプリントを注視したことも。その偶然が、ハルヒが原因でループさせていることへ繋がり、イメージとなって浮かぶ。ここまではスムーズなのですが、まだ疑問が残る。確かに象徴的ではあるけれど、他にもそういう物はあるのではないか。

でもって、これがまたしてやられたとしか思えないギミックで。

それからも俺達は動き尽くめだった。本物の花火大会にも行った。ハゼ釣り大会にも参加した。他にも肝試し、海水浴、ボーリング、カラオケ、映画のハシゴ、もちろん、それでハルヒが満足しているはずがないとは思っていたが〜

すっ飛ばして語られるSOS団の活動内容。原作と比較するといくつか足されているのですが、その中にメタ構造として注目すべき活動がありました。そう、映画観賞。エンドレスエイト1話目から映画をハシゴしたと語られているのに、まったく疑問に思わなかった。彼らはエンドレスエイトの中で、視聴者と同じように、「映像作品を観賞する行為」を毎回…かどうかは推測になってしまうのだけれど、かなりの頻度でやっている。ハシゴして見ている作品が毎回同じではないとしても、行動範囲から考えて、いくつかのパターンである程度決まった映画を見ているのだと思われる。

映画の内容は、1話で宣伝だけは豪華な大作映画としか語られておらず、4話で初めて1話とは違う映画が映された。

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水辺に佇む恋人同士とおぼしき男女。キョンのイメージ映像と合致する空を飛ぶ飛行機。

15513回のループ中、何度見たのかは定かではないけれど、キョンが何度もこの映画を見ており、実際の空や飛行機と結びつけて記憶していたから、イメージ映像として浮かんだのではないかと推測してみたい。4話では映画鑑賞のシーンで活動内容を語るという、他の活動内容とは一線を画す扱いにされていることも裏付けに。

何しろ、映画鑑賞の次にあたる喫茶店のシーンでは、

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映画鑑賞を終え、バツ印を付けるハルヒ。このレイアウトにする理由は、「映画鑑賞」に視線、意識を注がせるためでしょう。映画鑑賞、今回のエンドレスエイトにバツ印を付ける暗喩の解釈も出来る。同じようで違う映像なのに、ここまで来るとまた終わらないのかという思考が巡り、最初は引っ掛かりを覚えるけれど、何だろうくらいにしか感じられなかった。ループ構造に伏線を入れるならループの中に、活動内容の意図を隠すなら羅列の中に。エンドレスエイトは2話以降ずっと武本さんの脚本ですが、上手いというかやってくれるというか。メタ構造のヒントは、初めから提示してありましたと言わんばかりだ。これが冒頭で書いた数字、日付の構造・同期演出として繋がるのならば。

エンドレスエイト」、面白いじゃない。SF的な感覚にちょっとゾクゾクする、と言わざるを得ない。

ゾクゾクするのは良いのだけれど、どこまで続くのか。

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イメージ映像を形として描く。これも今までに見られなかった行動。遠ざかっていく飛行機をハルヒと見ている心情が吐露され、自分でノートに描くまでに意志が固まったのかもしれない。最後の独白が変化し、決心にも思える。

明日が来ようが来まいが、それはそん時の俺が何とかするしかないか…

まるで他人に預けるように、「任せりゃいいか」と言っていたのに、「何とかするしかないか」と、他人事からようやく自分で動こうとする主張を含む言葉へ。来週のキョンが何とかしてくれるのだろうか。少しばかり、頼りにしてみよう。


というか、エンドレスエイト4話は作監・植野さんの修正によるデフォルメがよく出ていたし、兎にも角にも演出・コンテの高雄統子さん。涼宮ハルヒシリーズを通して、非常に好きな回ですね。

夕暮れ時のキョン長門だとか。

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間の持たせ方といい、レイアウトといい。背景にある「ドリーム」「夢」という暗喩。水平のロングショットで映した長門キョンの構図が特に良いなぁ。上手・下手は勿論、背景で枠を作って見せ、長門側は黒、キョン側は白、オレンジ色のノボリが2人を分け隔てる。光源が左にあることで、影が自然と右へ寄る。長門有希が方向的に立ち向かう図になっているという、レイアウトの妙。リズムも素晴らしく、ロングからキョンの横顔を映し、次は対比的に左に寄った長門の横顔を映すのかと思いきや、真ん中ド安定のバストアップなんて。弱々しく、切なく、それでも観測の義務から逃れられない長門有希。このリズムで真ん中配置のバストアップはドキっとします。長門の追体験、切なさ云々は何度も書いたけれど、やっぱり長門有希なんだ。メッセージ性のあるカット。こういう割り方は好みも好み、大好物です。もっとやって下さい。

夜の公園、ジュースを買うキョンまで。

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またしてもレイアウトに粟立ちました。長門有希だけを隔離するような柱、その意図は言うまでもなく。ループの事実を知らせた後は、「事実の共有」を示すように隔てるものはなく、しかし階段まで映した、ループの最上段にいる意図を込めて。キョンの背後から映し、正面から自販機の狭い明かりを灯す。キョンを見ているのは視聴者ですから、視聴者の声を代表するかのように長門有希の心情をおもんばかる絵。このシークエンスはセミであるとか、心の蠢きのメタファーなのかトカゲだとか、細かいカット割で感情の速さをコントロールし、リズム良く繋いでいました。レイアウト、コンテ、音響、演出の調和がたまらない。

ぶっちゃけ、何処を切り取っても好みの演出が散りばめられていて、こんなエンドレスエイトなら何度でも見たい。何度も…は言い過ぎかもしれないけれど、めっちゃ好きですよ、こういう演出。趣味嗜好の問題でもありますが、この演出の上に、メタ構造、同期する演出まで乗るのだから…エンドレスエイトって何なんだろうなぁ。

柴 2009/07/11 10:43 > 4話は 2, 3話と比較して明らかに差異が見られ

録画して見比べたわけではないので、はっきりとは言えないのです
が、自分は話す速度が少し遅くなっているような気がしました。

何度も同じ場面を目にしているので、キョンは次にこれを言うよね
と頭が勝手に先読みし始めるのですが、話すスピードがゆっくりと
したものに感じられるため、何とも言えない妙なじれったさだけが
残りました。

# 単にみんな疲れてノリが悪くなっているだけかもしれませんが、
# はずしていたらごめんなさい。

もっさりもっさり 2009/07/12 02:09 はじめまして。
2話、3話、4話と進むごとに、キョンたちが集合する深夜の広場の照明、及び、キョンが自転車を押して帰る際の街の明かり、天体観測が行われるマンション屋上の照明が明らかに暗くなっていきますよね。
昼の光はより眩しく、夜の闇はより深くなっていき、その中間色が存在価値を失って映画の白黒の映像が現れてきたのかなあという印象を持ちます。
何にせよ、各話を横断的に比較すると面白いですよね。

す 2009/07/12 08:48 たしか、フィルムの複写を繰り返してコントラストを高める技法があったはず。
繰り返されて明暗のコントラストが上がっていった日常が、9月1日の朝に
通常の絵に戻るのかな?
劇的な転換点で白黒→カラーを行ったのは「オズの魔法使い」でしたっけ。

なまえなまえ 2009/07/12 16:03 SF的には好きなんだけどテンポよくして1話ごとに2ループか3ループすれば楽しめたかもなあ

なまえなまえ 2009/07/12 18:44 8/17〜8/31 をループしてるから 15日あるんじゃない?

tatsu2tatsu2 2009/07/12 20:37 コメントありがとうございます。

>柴さん
話す速度がゆっくりに感じるのはキョンの説明が少し長くなっていること、同じシーンを描く時には編集したかのように短くしたり、省略したりするなど、キョンのモノローグの多さが目立ってきているからかもしれません。
妙なじれったさ、はありますね。

>もっさりさん
照明・光源のこだわりは2話から見せてくれていましたが、映画の白黒へ繋ぐ解釈は面白いです。言われてみればその通り。各話比較をやれば、服装の色、小道具などからも意図するものが見えてきそうな気はします。ちょっと数が多すぎて、労力的にやりませんでしたが。

>す さん
テクニカラーのことでしょうか。明暗の対比的な映像が9月1日にはどうなっているかは想像に頼るしかありませんが、「オズの魔法使い」を例えに出すセンスは見習わせていただこうかと…。テクニカラーの代表ですもんね。
劇的な転換点、色という観点からの解釈は素晴らしいの一言です。勉強になります。

>なまえさん
1話ごとに複数回ループする、という考えでいけばストーリーの違いが大きくなって、印象は変わったかもしれません。ただし、それを行わなかったから比較し易い状況もある訳で、一概には言えないところがあるように思います。疲労感は当然ありますが…

ループの日付は、原作でも「17日の早朝あたりにセーブポイントがありそう」という台詞があり、アニメでもキョンは計算式、台詞から2週間で考えているようなので、キョンに沿った形で考えた方がいいかな、と。指摘されたとおり、厳密には少し変わりますね。

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