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きょうの社説 2009年7月13日
◎新高岡市長に望む 新幹線時代へ「総仕上げ」を
高岡市長に選ばれた高橋正樹氏に最優先課題として取り組んでほしいのは、新幹線時代
を見据えたまちづくりの「総仕上げ」だ。2014年度の北陸新幹線金沢開業までに、その効果を十分に享受できる態勢を整えられるかどうかが、これからの高岡の浮沈のカギを握る。加賀百万石のDNAを受け継ぐまちにしかない貴重な歴史遺産や豊かな文化にさらに磨きをかけ、それを前面に押し出して、富山県西部の拠点都市の復活を期してもらいたい。故郷を離れて官僚生活を送っていた高橋正樹氏が、出馬表明後の本紙インタビューで「 駅前から眺めるストリートの姿は、子どもの時のイメージと大きく違う」と語ったように、高岡は明らかにかつての元気を失っている。少子高齢化が加速する中で都市の活力を取り戻すためには、定住人口の確保だけでなく、新幹線や高速道路などをフル活用して交流人口の拡大を目指す視点が欠かせない。 橘慶一郎前市長は、交流人口を増やすための切り札として加賀藩のブランド力に着目し た。世界遺産登録運動を通じて加賀藩の遺産の再評価に努め、その一環として加賀藩の本拠地であった金沢と共同で実施した前田家墓所と前田利長墓所の調査は、国史跡指定という成果を生んだ。金沢などと連携して、加賀藩をテーマとした広域観光ルートの発信にも乗りだした。開町400年の節目を祝う事業も、今まさに進行中である。 もっとも、歴史まちづくり法による「歴史都市」認定や御車山展示館(仮称)の整備の ように、道半ばの取り組みも少なくない。高橋正樹氏には、金沢との協力関係など前市長が残した布石を生かしながら、一層のスピード感をもって加賀藩に光を当てる施策を推進することを求めたい。特に御車山展示館の開館は、ぜひとも14年度に間に合わせたい。 もちろん、新幹線の開業は、ものづくり産業の活性化や企業誘致などにも「追い風」と なる。経済環境や市財政は決して楽観できる状況ではないが、そんな時期だからこそ、自治体のトップとして存分にアイデアとリーダーシップを発揮してほしい。
◎案内図の誤表記 市民に協力を求めては
城下町・金沢のメーンストリートである百万石通りなどに設置されている案内図で、方
角を表す記号の誤表記が見つかった。地理不案内な遠来の観光客らに正確な情報を提供するのはもてなしの基本であり、観光都市としては、あってはならないミスである。誤りに気付かないで設置してしまったことはもちろん、長く気付かずに放置していたのも問題だ。市には反省と再発防止の努力を求めたい。再発を防ぐためにまずなすべきことは、設置前のチェックの強化である。ただ、人間の やることに完全はなく、どれだけ確認しても漏れは起こり得る。設置済みの案内図にも普段から目配りし、誤表記が発見されれば速やかに修正する態勢を構築しておくことも重要だろう。市の担当者だけで手が足りないのなら、市民にも協力を求めてはどうか。 市民も、「案内図がなくても不自由しないから」と無関心でいるのではなく、今回のよ うに、県外から来た観光客に誤表記を指摘されるのは恥ずかしいという意識を、官民で共有したい。特に、豊富な観光案内の経験を有するボランティアガイドのまいどさんや金沢グッドウィルガイドネットワークの面々は、貴重な「戦力」となり得るはずであり、観光客の目線に立った鋭いチェックに大いに期待したい。 幸い、今回の誤表記によるトラブルは、今のところ確認されていないようだが、もし、 不快な思いをした観光客がいたとしたら、その人は、観光地としての金沢をどう評価するだろうか。北陸新幹線開業に向け、熱心な金沢ファンを増やすためには、大がかりなキャンペーンとともに、足元を見つめ直す取り組みも大切だ。 市が設置した案内図では、過去にも卯辰山中腹に並ぶ神社の位置の誤表記が見つかって いる。もしかしたら、案内図だけでなく、パンフレットやチラシ、ホームページなどでも、誤りや分かりにくい点が見落とされたままになっているのではないかという懸念もぬぐえない。この際だから、それらの総点検も行ってほしい。
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