2007-11-26 22:30:59

『コンテンツ』の価値は…。

テーマ:ブログ

 ちょっと目に止まった記事をネタにしてみる。


[北の大地から送る物欲日記]アニメコンテンツの品質と入手手段のねじれた関係

http://d.hatena.ne.jp/hejihogu/20071123/p2

 簡単にまとめると「アニメコンテンツの画質、値段、利便性は需要と一致していないのではないか?」という記事。


 ゴンゾの偉いさんに100回読ませてあげたい。



-----


 80年代に「日本のアニメの歴史を変えた傑作」は、実は3作品ある。

 大友克洋監督の「AKIRA」。

 ガイナックス第1回作品「王立宇宙軍オネアミスの翼」

 そして川尻善昭監督の「SF新世紀レンズマン」だ。


 若い人にとっては「レンズマンって何?」と本気で知らないアニメだろうが、ガンダム世代の人なら「…あー!あったあった!」と思い出すのではなかろうか。

 書籍「AKIRAアーカイブ」の氷川氏の解説文ではAKIRAと同時期の作品と紹介しながら「商業的には大コケした」といったように書かれている。

 しかし実際には「日本初のCGを大規模に取り入れたアニメ」として大きな注目を浴び、主題歌を歌うアルフィーの「STARSHIP」は大ヒットしてラジオのリクエスト番組でも長期にわたって支持された。後にTVアニメとしてスピンオフしたほどだ。

 内容的にもOVA「魔界都市『新宿』」をスケールアップして万人向きにしたようなストーリーで、クオリティも「妖獣都市」より高い出来栄えだ。マニアックな見どころも多く、作品としての完成度は「AKIRA」「王立宇宙軍」を超えている。


 …ところが劇場版レンズマン自体は一度もテレビで放送されたことが無く、よって映画館で観た人しか記憶していないアニメ作品となってしまった。レンタルビデオブームはその数年後の事で、しかもレンタルの値段は1000円前後と非常に高かった。ビデオ版の発売時に宣伝をされた様子も無い。



 僕はCMでの綺麗な映像にシビれながらも、映画館に連れて行ってもらえず見逃し、後に菊地秀行オタクの友人に「魔界都市『新宿』」を進められて気に入って、このアニメを作った監督のほかの作品も観てみたい!と探していたところでSF新世紀レンズマンを作ったのも川尻善昭監督だったと知った。

 ほとんど偶然めぐりあえたようなものだ。


 ようやく観れた「レンズマン」は、AKIRAほど突出したアニアックさもなく、王立宇宙軍のようなオタク的フェチティズムも無いが、全編にわたってクオリティが高い位置で安定していて、音楽もCGもいまでもカッコイイし、普遍的なジュブナイル的面白さもあり、誰が見ても楽しめる作品になっている。なにしろ川尻監督作品で2時間のものが希少だ。


-----


 ところが「SF新世紀レンズマン」は一度もDVD化されていない。


 僕はレンタル落ちのワゴンセールでビデオを買ったのでいつでも観れるが、そろそろテープの劣化も気になっている。DVDが出たらボッタクリ価格の1万円でも欲しいところだが、まったく発売される気配は無い。「アニマトリックス」「ヴァンパイアハンターD」で世界的アニメ監督となった川尻監督作品なのに、便乗発売の気配さえない。



 僕がDVDで欲しいアニメというと、安彦良和作品だろうか。「アリオン」はDVD化されているが「ヴィナス戦記」はDVD化されていないらしい。安彦良和初監督作品である「クラッシャージョウ」もDVD化されているが、僕が店で見かけたものはOVA版とセットになったBOXで、OVA1作目がイマイチな出来だったので(2作目は良い出来だが)買うかどうか悩んでいるうち店先から姿を消した。それから一度も売っているのを観た事が無い。


 アニメに限らず、映画のDVDでも僕の欲しい作品はなかなか売っていない。

 例えば、多くのゲームの元ネタとなっている映画「ゾンビ」は、これまで一度も廉価版DVDが発売されていない。何年も前に作られたDVDのパッケージのものしか無い。昔のDVDだとビットレートが不安だし、高い価格設定のままだ。

 「タイタニック」は大ヒットして何度も何度もDVD化されたが、ジェームスキャメロンが製作総指揮や脚本を手がけた「ストレンジディズ」は大昔にCDケースサイズでDVD化されたきりだ。


 他にも僕が買いたいDVDというものは沢山あるのだが、どれもDVD化されていなかったり、DVD初期に作られたCDケースサイズのパッケージのものだったりする。ほとんど嫌がらせだ。


 僕だけかもしれないが「買いたいDVD」は「好きな映画」とは、ちょっと違うのだ。

 例えば「ハムナプトラ(1作目)」は大好きな映画なんだけど、DVDを買って何度も観たいという気にはならない。逆に昔観た時には「うわ~、気分の悪い映画だなぁ」と思った「12モンキーズ」などのテリー・ギリアム作品は何故かDVDで手元に置いておきたい気分だったりしている。


 しかしDVDは、世間的にヒットしたといわれているものしか売られていない。


-----


 つまり、冒頭で扱った「アニメコンテンツのねじれた関係」も、映画DVDが極端に偏っているのも、コンテンツが売れなくなっているからとか、その原因がネットでの違法動画共有とかといった以前の問題なのではないか?


 ぶっちゃけて言えば「売ってる側ってよっぽど馬鹿なんじゃねぇの?」という事だ。


 「欲しいDVD、売ってりゃ買うよ」といっている僕がココにいる一方、「ネットのせいでDVDが売れない」といっているメーカー側がいる。

 これじゃぁメーカー側に売る気が無いのではないかと勘ぐってしまう。



 アニメファンの多くは、実は「萌えアニメファンではない」のではないかと思う。


 確かにネットでは些細な事で萌え系アニメの話題が爆発的に広まる。全国放送で無いにも関わらず、動画共有サイトにUPされる前に「SCHOOLDAYS」の明言「Nice Boat」がネットに広まった。見ていない友人が「ネットでNiceBoat見て声を上げて笑っちゃったよ」なんて話していた。

 しかし冷静に考えてみると、そういった話題も案外とフィギュア人気と同じぐらいではないかと思ってしまったりする。「ねんどろいど」やALTERの長門水着Ver(http://www.alter-web.jp/figure/08/03_1/index.html )のほうがアニメより盛り上がっているような気さえする。数人のスタッフで量産できるフィギュアに、販売価格が似通ったアニメDVDが負けていたりするのかと思うと製作者が可愛そうになる。


 しかしやはり「萌えアニメ」って、そんなに利率の高い商品では無い気がする。

 だって俺、毎週「御愁傷様 二宮くん」を見てるけど(笑)、DVD買いたいとは思わないし、ネットでも盛り上がってもいないようだし。



-----


 …こうなると企画段階で失敗している制作側、販売知識の無い販売側という深刻で根本的な問題が浮かび上がってくる。


 「話題作だから」という理由だけで「話題作の映画」を捨て値で大量生産し、消費者を馬鹿にするかのような「2枚買ったら1枚タダ」なんてキャンペーンをやって混乱させる販売側。


 「いま流行しているから」と安易にギャル系ライトノベルのアニメ化を決め、予算をケチって作画まで朝鮮に押し付け、まるで見どころの無い作品を作っていながらそれに気付かず「ネットで違法に流布しているから売れない」と、あろう事か消費者を敵にしている制作側。



 うーん、ホント、馬鹿なんじゃないかと。


 例えば「UG アルティメットガール」はネットで無料放送され、一気に知名度を上げた。作画はそれほど高いクオリティではなかったが内容が面白かったし萌え(というかセクハラ的)要素も多く、作品としての出来が高かった。この無料放送がどれだけDVDセールスに作用したのかはネット検索では不明だったが、少なくともプラスには作用しているのではと思う。


 画質が少々悪くても無料ネット配信という手法はテレビと同等かそれ以上の宣伝効果があると思われる。ただしニコ動が正しいという事ではなく、期間限定であったり、再放送されたりと、ネット上でのオンエアでもコントロールが必要になる。ネットで垂れ流しただけでは作品価値が下がるからだ。

 ネットだとトラフィックの問題もあって回線の調子で見易さが左右される。アクセス集中で動画がカクカクすればストレスがたまる。いつでも見られるという事を認めてしまったらそれがデフォルトという事になってしまい画質が悪いのが当たり前という事になる(例=YouTube)…視聴者側は案外と画質を重視していないという調査結果もあり、DVDセールスにプラス作用するとは限らない。


 「アルティメットガール」以外の、最近の成功例は「FREEDOM」だろう。

 大友克洋作品でもなく、カップヌードルCMのタイアップアニメでしかないのだが、期間限定の無料放送をやって好評を得ている。SF設定も限界まで省略したシンプルなストーリーと面白さで、トントン拍子に展開する。この面白さはテレビCMだけでは伝わらない。意図的なのかエンコードの都合なのか、「FREEDOM」の無料放送ではところどころカクカクする(例=OP)が、無料なので腹も立たない。

 僕のいきつけのビデオレンタル屋では、僕の予想以上に「FREEDOM」のDVDが常にレンタル中で、このビジネスモデルが成功している事の表れではないかと思っている。かくいう僕もレンタルした一人だ(笑)。



-----


 そもそもDVDは、画質が綺麗だから普及したワケじゃない。

 ビデオテープが破損しやすく場所を取るメディアであったのに対し、DVDは場所も取らないし、テープのように伸びたり切れたりする事が無い。

 DVDも最初は録画出来ないメディアだったので、一部の映像マニアだけのものだった。「欲しいけれど買うほどのものでもない」…普通の人にとってはその程度のものではなかっただろうか?

 ゆっくりとソフトが揃い始め、DVDの知名度が一般に広まった頃に発売されたのが、プレイステーション2だ。PS2はゲームが遊べる事よりもDVDが観れる事でヒットした。一般的なDVDプレイヤーよりもPS2のほうが安かったからだ。PS2発売当初はゲームよりDVDが売れた。ファミ通の新作コーナーにDVDソフトが載るようになった。


 DVDは、副次的需要で売れたようなものだ。

 一部マニア向けだったDVDソフトが一般層にも売れ出した事で、コンテンツ販売側は味をしめたのだろう。同じ作品を何度もリニューアルし、HDDVDだとかBlieRayだとかと何度も金を毟り取ろうとするコンテンツ販売側の姿勢が企業体質を物語っている。


 「売れるものは何度でも何回でも売ってやる」


 これがDVDなどのコンテンツが売れなくなった一番の原因ではないだろうか?


-----


 ショボくて売れないアニメなどを作る「コンテンツ制作側」にも問題は山ほどあるが、売れるものを売らずに流行モノばかりを大量生産して投げ売りする「コンテンツ販売側」の不勉強っぷりは、致命的だ。


 例えばアニメのビジネスモデルでは「DVDを売る」事で赤字を回避する事が常識となっている。アニメを作って放送するだけでは100%赤字なのだ。DVDが売れてようやくビジネスになる。

 海外で日本製アニメが人気といわれているが、これも日本アニメの放映権が非常に安いからで、「ワンピース」が海外で失敗したように作品自体が改変される事があるほど無碍に扱われている。安物として扱われているようなものだ。海外で成功したアニメも、利益を得るのは主にグッズ販売の収益なのだそうだ。



 ところが、アニメを始め映像などの「コンテンツ」というものは、生きるには不要だが生活するには必要不可欠なものだ。


 トヨタがどれだけ自動車を粗製乱造したとしても、車は壊れたりしない限りそう簡単に買い替える商品ではない。しかし「面白い映画やアニメが1作品あれば死ぬまで他の作品は不要だ」という人は一人もいないだろう。コンテンツは常に供給を求められている、無尽蔵の需要があるビジネスなのだ。


 思い返してみると、アニメで流行しているといわれている「萌え系」も、新しいコンテンツではなく、むしろ手垢のつきまくったカテゴリだ。

 「カリオストロの城」の劣化コピーばかり作って安いヒロインと安いロマンスをして、元々のダークヒーロー的な面白さを失った「ルパン三世」が延々と失敗を続けている。

 「エヴァンゲリオン」の二番煎じを狙って、複雑な裏設定や安易な謎を大量に詰め込んだ挙句に最終回まで複線を消化できずこけてしまったアニメも数知れず。結局は理屈を捨てた単純すぎるほどストレートな「グレンラガン」が大ヒットとなった。


 せっかく無尽蔵の需要があるコンテンツビジネスなのに、過去の劣化コピーばかり繰り返し、「昔ヒットしたものと似たようなものを作ったのに何故売れないんだ?」と頭を抱えているメーカーが、ニコ動以上に日本のコンテンツビジネスを衰退させていると思う。

 僕は素人だが、素人目に見ても不勉強すぎるのだ。



-----


 前回のこのブログで、「ニートが同人ソフトとか作ったら凄い事になるかも」と書いたのも、同人ソフトもコンテンツだからだ。


 ぶっちゃけ、サクっと同人ソフトを作って1万本ぐらい売ることが出来たなら、それはテレビアニメにさえ勝ったようなものなのだ。アニメDVDだって1万本売れるものはそうそう多くない。


 もうちょっと規模を広げて、仲間を集めて大規模な作品を作ったら?

 更に規模を広げて、同人製作で商業作品に匹敵するものを作り出したら?


 もちろん簡単には行かないし、きちんと色々と勉強して、真面目に取り組まなければならないが、一般レベルでそこまで出来るのは、ニートやネット職人などの「コンテンツ販売側がカモと思っている人」だ。

コメント

[コメント記入欄を表示]

コメント投稿

コメント記入欄を表示するには、下記のボタンを押してください。
※新しくブラウザが別ウィンドウで開きます。

一緒にプレゼントも贈ろう!