西日本新聞

改正入管法 人権への配慮も忘れるな

2009年7月13日 10:09 カテゴリー:コラム > 社説

 3カ月を超えて日本に滞在する外国人に対して、新たな在留管理制度を導入する改正入管難民法などの関連法が成立した。新制度は3年以内に施行される。

 これにより現在、市町村が発行している外国人登録証は廃止され、法務省が新たに交付する「在留カード」によって、外国人の在留中の情報などを国が一元的に管理することになる。

 法務省は新制度の施行によって「不法滞在を減らせる一方で、適法に暮らす外国人は利便性が高まる」と言う。

 しかし一方で、外国人の間には「監視が強まり、差別の助長につながる」と、新制度を不安視する声もある。

 もちろん、不法滞在には厳格な対応が必要であるが、新制度の運用にあたっては個々の事情を考慮するなど人権への配慮を忘れてはなるまい。

 外国人ではあっても、かれらが地域に共に生きる人々であるという視点を欠いては、せっかくの制度改正も「ペナルティーを科すための外国人監視システム」になってしまう。

 現行制度では、外国人の在留資格は法務省が与えるが、在留中の住所や勤務先などの登録は市町村が担当し、外国人登録証も市町村が発行している。

 登録証を持つ外国人は2008年末に220万人を超えた。20年前の2倍以上だ。しかも最近は転居や転職を繰り返す外国人が多く、どこに住んでいるか把握できないケースが増えている。これが不法滞在の温床になっているとの指摘もあり、今回の法改正につながった。

 新制度では、外国人登録証に代えて、法務省が顔写真や在留資格、有効期間などを明記した在留カードを交付し、不法滞在だけでなく不法就労なども一目で見分けられるようになるという。

 カード所持者は住民基本台帳に登録され、転出・転入の届け出が義務づけられる。これによって、転居などの情報を市町村との専用回線を通じて法務省が継続的に把握できるようになる。

 一方で在留期間の上限は現行の3年から5年に延長され、市町村に住民登録することで日本人と同様の行政サービスが受けられるようになるなど、適法な滞在者は利便性が高まるという。

 在日韓国・朝鮮人などに別途交付される「特別永住者証明書」については、歴史的な経緯に配慮して国会審議の過程で証明書の常時携帯義務が撤廃された。この措置は評価したい。

 しかし、一般外国人に交付される在留カードは携帯が義務づけられ、不携帯には20万円以下の罰金が科される。運用にあたっては柔軟な対応を求めたい。

 さらに問題なのは、10万人を超える不法滞在者の扱いだ。法的には不法滞在であっても「在留を認めるべき理由のある人」については、制度改正で教育や就労、社会保障から一律排除されないような政府の配慮が必要だろう。


=2009/07/13付 西日本新聞朝刊=

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