日本外交の密約体質をたしなめる刺激的な発言が与党内から飛び出した。河野太郎衆院外務委員長(自民)が「外務委員会では今後、『密約はない』との答弁の繰り返しは認めない」と述べた。
河野氏は、核兵器を積んだ米艦船や航空機の立ち寄りを黙認する日米間の「核持ち込み密約」の存在について、村田良平元外務事務次官に聞き取り調査を実施。その結果、密約の存在を確信した。
政治家の存在感、良識を感じさせる言動だ。外務省は公式に同密約の存在を認め、国民を欺いてきた経過を説明し素直にわびる時だ。
河野氏は、密約を否定し続ける従来の政府答弁の撤回を求めると同時に、歴代事務次官の参考人招致を検討する意向も示した。ぜひこの二つの提案を実現してほしい。
これまで繰り返し密約の存在を追及してきたのは野党だった。一部とは言え与党内から政府の「密約否定」答弁に異議が出てきたことの意味は極めて重い。
密約問題の本質は、国民と国家との信頼の問題である。政党の党利党略の次元で語られるべきではない。密約を生み出す政党と官僚のなれ合いは、どのような政権の下でもあってはならないからだ。
外務省条約局長を務めた元同省幹部の証言で、核密約の内容を記した1960年1月6日付の英文「秘密議事録」が冷戦時代から同省の北米局と条約局で厳重管理され、幹部、担当者に代々引き継がれてきたことも明らかになった。
村田元次官の説明では、密約はこれまで歴代の事務次官らが引き継いで管理していたというが、元幹部によれば、外務省ぐるみで密約を隠してきたことになる。
歴代の首相や外相に「密約は存在しない」とうその答弁をさせ続けた外務官僚とは何なのか。米軍に基地や装備の運用を自由にさせることが日米同盟を強固にし、国益にかなうと思っているのか。もしそういう意識であるなら“歪(ゆが)んだ愛国心”と言わねばならない。
密約問題で問われるべきは、外交の優劣だけではない。密約という日米関係の闇を前に、三権分立は機能してきたのか。密約問題を手掛かりに、司法、立法の関係者も外交、安全保障政策にかかわる自らの不作為を省みる必要があるだろう。密約問題はこの国の民主政治の根幹にかかわる重大な問題だ。徹底的に検証したい。
次の記事:外国人観光客 グローカル戦略の強化を>> 今日の記事一覧
今月の記事一覧
最近の人気記事
Photo History
琉球新報掲載写真でつづるオキナワの歴史
しんぽう囲碁サロン
世界中の囲碁ファン会員と対局
ライブカメラ
琉球新報泉崎ビルに設置したライブカメラ
りゅうちゃん商店
ウェブサイトからも購入可能に!
ちょBit
新報パーソナルアド
ウイークリー1
沖縄県内・県外就職・求人情報ニュースサイト
琉球新報の本
琉球新報の本がネットでも購入できます
週刊レキオ
生活情報満載の副読紙。毎週木曜お届け
新報カルチャーセンター
130講座 学ぶ楽しさがいっぱい
新報ローカルブログ
ミニコミ紙連動のローカル情報
〒900-8525 沖縄県那覇市天久905
紙面・記事へのお問い合わせは、読者相談室までどうぞ。
電話098(865)5656 (土日祝日をのぞく平日午前10時〜午後4時)
©The Ryukyu Shimpo
本ウェブサイト内に掲載の記事・写真の無断転用は一切禁じます。すべての著作権は琉球新報社または情報提供者にあります。