編集: 金森 喜正
労働保険徴収法41条の規定は、行政の相手方に適用されるだけであろうか
「労働保険徴収法」41条の「労働保険料の還付請求の権利の消滅時効は2年」という規定は、行政の相手方に適用されるだけであって、行政が労働保険料の還付をする場合には2年を超えるそれ以前の分を還付してもさしつかえはない、というような解釈が可能かどうか、私はこの解釈は法解釈上は無理である、(それも相当の自信を持って)と考えています。
しかし、いや、そう言う冒頭にあげた解釈も可能である、という論客がおられましたら、その理論的根拠をのべて、私の蒙を啓いていただけませんか。


服部 問いかけないし論理には、なにか、ひっかかるものを感じます。表現上の問題に過ぎないのかもしけれませんが??

1 国に対する還付請求権等国の債務に関する 消滅時効期間が、他の場合に比して、短期にさだめられている理由は、「国の債務関係」の「早期確定」という要請だったと記憶しています。

2 消滅時効を援用するか否か、という時効規定の論理からすれば、国と私人に差異はないと思います。

3 ただ、国の場合には、私人と同様に「私的自治に完全に委ねていいのか」という別個の問題があろうかと思います。
  法の下の平等その他国家権力に対する規制法令があるからです。

4 結論としては、前記1記載の法の趣旨、3記載の要請に配慮しながら、これらの制約のなかで合目的的に、2記載の援用権行使の可否が決定され、されるべきでは・・・??・・・と思っています。

5 思いつきですが・・・

6 思いつき論理の結論は・・・
  「一律に、不可能という結論は還付請求権の消滅時効の規定−のみ−からは−でない」ということです。

Q: 労災保険率の適用を間違え、高く徴収していた、という場合には、適正な労災保険率で計算された保険料との差額分についてだけを違法な保険料の賦課徴収処分として、職権で取り消せばよい、ということになるのでしょうか. で.行政が労働保険料の還付をする場 合には2年を超えるそれ以前の分を還付してもさしつかえはない、ということになるのでしょうか、念のためお尋ねする次第です。


湯川: 法41条は還付請求権の消滅時効を規定しているだけで、その名宛人は還付請求者であって、行政ではありません。行政の立場としては、過去の保険料の賦課徴収処分を職権で取り消せば良いのです。職権による取消の根拠は、法治国原理の要請であると考えられているので、行政において違法な処分であったことの確認が出来る限り、取消の時的限界はないものと思われます。但し、これはあくまでも行政自らの職権取消ですから、保険料納付者にはこのような職権取消を請求する権利はないと考えられます。


Q: 私は某労働局に勤務する人間です.じつは私の手がけた案件で、ある事業場が何年か前に労働保険の加入の手続きをしたとき、じっさいの事業の内容より高い労災保険料率を誤って適用し、そのままずっと高い保険料を徴収していたことが、最近になってわかったのですところが、「労働保険徴収法」41条には労働保険料の還付請求の権利の消滅時効は2年となっているので、それ以前の分は返せないということではあまりにも相手方が気の毒なので、なんとかそれ以前の分についても返せるような方法はないかと考え、ああいう法解釈をおもいついたというわけです。
なお、このml上で、湯川さんより、そういう場合は行政が職権で、保険料の賦課処分を取り消せばいいのだ、とのご指摘をうけ、目から鱗の思いです。