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サステナビリティ・ガイドラインを作成したNGO、GRIがコミュニケーション・コンサルティングを手がける Radley Yeldar と実施した世界調査で、多くの企業がウェブサイト上でのサステナビリティ情報開示を進めてることが分かりました。一方、閲覧者の使いやすさ(ユーザビリティ)に関しては各社改善の余地があるということです。


調査には、双方向コミュニケーションのためのweb 2.0、現在金融庁を中心に普及が進められている情報一括管理システム、XBRLの活用状況に関する項目も含まれています。また、CSR報告書とアニュアル・レポートの統合版を活用する企業は全体の20%だったと報告されています。




報告書は『オンライン・サステナビリティ・レポーティングに関する傾向(Trends in online sustainability reporting)』と題されたもので、各国の多国籍企業40社 <※> を対象に、GRIが提案するサステナビリティ・ガイドラインに沿った情報開示のために各社のウェブサイト上でいかにデジタル技術が活用されているかを調査しています。


ウェブ上での情報開示における最近の傾向は以下の5点です。


1) CSR情報の位置づけ

  ・ トップページから直接CSR情報に行くことができる (30%)
  ・ トップページにサステナビリティ・セクションを設けている (82.5%)
  ・ GRI情報を全て掲載している (40%)
  ・ CSR報告書とアニュアル・レポートを統一している (20%)


2) フォーマット

  ・ PDFファイルで開示している(50%)
  ・ HTMLやFlashを活用しフル・オンライン報告をしている(32.5%)


3) 双方向コミュニケーション (web 2.0) と情報ユーザビリティ (XBRL)  <※>

  閲覧者がコメントを残せるなど、双方向コミュニケーションを試みる
  web 2.0関連システムを活用する企業はゼロでした。
  さらに、GRIは近年、XBRL(eXtensible Business Reporting Language)
  という企業のグローバル情報の電子化システムの活用を推進していますが、
  これもゼロでした。

  ・ web 2.0 関連システム活用 (0%)
  ・ XBRL 活用 (0%)


4) 開示情報の統一性

  CSRは、各社が多種多様なパフォーマンス指標を活用しているため、 
  比較可能性が低いことが課題となっています。
  この課題に関して、前述のXBRLの導入以外の方法として、
  GRIガイドラインの対照表の掲載という方法があります。

  ・ GRI対照表の掲載(ハイパーリンク含める) (5%)


5) ユーザー主体の機能

  ・ 閲覧者のコメントを活用するなどの工夫をしている企業は、
    サステナビリティ・ブログを運営する 1社 のみでした。



※ 対象となった40社のうち日本企業は飯野海運、シャープ、新日本製鐵の
   3社が含まれています。



Companies Are Slow to Adopt Interactive Technologies in GRI Reporting
May 21, 2009
SocialFunds.com



<※> XBRL (eXtensible Business Reporting Language) と ESG情報の活用について

XBRLは、現在、金融庁が進めているディスクロージャー制度の信頼性確保のためのシステム。これにより、XBRLが財務データに含まれると分析に必要なデータを転記して計算することができ、他社比較が簡単にできるようになる。国内外の投資者や金融機関、監督官庁、証券取引所などに加え、上場会社においても透明度の高い財務情報をタイムリー・スピーディーに把握できることが期待されることから、証券市場における機能の向上とともに、会社経営そのものに大きなインパクトを与えることが期待されている。

現在市場で活用されているEDINETはHTMLを使用しているが、XBRLが活用されると、データをバーコードのように管理することができるため、瞬時に検索・加工ができ、転記・入力・計算することが可能となる。国際統一規格なので多国語対応となっており、海外のアナリストも簡単に日本企業の詳細なデータを活用できるようになる。米国、欧州、中国でも導入が進められている(一部抜粋)。

GRIがXBRLの活用を推進する理由は、ESG情報がこのような新たな財務情報の一括管理化に組み込まれれば財務情報中心の企業評価に変化をもたらすことができると考えるためであると推測される。


 → XBRLについては東証のホームページで詳しく紹介されています。 こちら
 → ちょっと教えてXBRL(アニメーションで簡単にXBRLについて学べます) こちら


● 『オンライン・サステナビリティ・レポーティングに関する傾向
  (Trends in online sustainability reporting)』(HTML) こちら

● Radley Yeldar ホームページ こちら

● 対象企業40社――アプリケーションレベル別 こちら

● 対象企業40社――地域別リスト  こちら
   (日本企業は飯野海運、シャープ、新日本製鐵、の3社が含まれています。
    また、中東・アフリカ企業が比較的多く含まれています。)





[関 智恵]

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