衆院選が近づいてきた。05年9月の郵政選挙からの約4年間に、暮らしぶりがどう変わってきたかを振り返った。いま、あなたの切実な問題は何ですか。【立山清也】
郵政選挙以降、大きく変わったのは働く環境だ。04年3月に製造業への労働者派遣が解禁されたことが転機だった。好景気を背景に製造業などで派遣労働者の雇用は急増。非正規雇用は働く人の35%程度を占めるまでになった。雇用主は非正規を雇用の調整弁としてだけでなく、厚生年金の負担逃れにも利用。その過酷な労働は現代の「蟹工船」と呼ばれた。
08年秋以降の急激な景気後退で企業はなりふり構わず雇用調整を進め、派遣切り(解雇)、就職の内定取り消しなどが相次いだ。08年末には「派遣村」が各地に誕生。解雇されると仕事と住まいを同時に失い、路上生活に転落しかねない非正規雇用の危うさが露呈した。昨年10月から今年9月までに職を失ったか失うことが決まっている非正規労働者は22万3243人に上る。
06年4月の改正介護保険法施行に伴い、筋力トレーニングなどを取り入れた介護予防が始まった。筋力向上で重度化を防ぐ一方で、従来の生活援助を制限し、給付費増大を抑える狙いだった。しかし、同居家族がいる場合、調理などの「生活援助」は使いにくくなり、「保険料払ってサービスなし」という事態を招いた。
07年4月にはコムスンの介護報酬不正請求が明らかになり、業界の過酷な労働と、低賃金による離職率の高さが浮き彫りになった。今年度、介護報酬は初めて引き上げられたが、サービスに見合う人材の確保は依然大きな課題だ。このほか、地方で暮らす親を介護せざるを得ない「遠距離介護」の問題や、介護で疲弊する家族らの共倒れを防ぐための介護者支援が課題として浮かび上がっている。
老後の支えである年金は、持ち主が特定できない5000万件の記録が明らかになるなど、信頼が揺らいだ。75歳で高齢者を「線引き」した後期高齢者医療制度は08年4月の開始早々から混乱を極めた。たびたびの見直しを行ったが、高齢者医療の抜本改革はいまだに実現していない。
年金、医療などの社会保障費は増大が避けられず、消費増税による財源確保が取りざたされている。
3年連続の上昇で女性1人が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は1・37となった。だが出産期の女性も減少しているため、子どもの数は横ばい状態だ。子どもが少ないにもかかわらず、認可保育所に入れない待機児童は、08年4月の約2万人から10月には4万人超に増加。「待機児童ゼロ」の達成は依然遠い。
小児科・産婦人科医の不足で、出産・子育ての不安も増した。06年には奈良県で19病院に受け入れを断られた妊婦が死亡。周産期医療(出産前後の母子への医療)の見直しが迫られた。地方では廃院・診療科の閉鎖も相次いでいる。
一方、教育分野では国や自治体の予算抑制から、低所得世帯が学費を負担できず、高校、大学を中退せざるを得ない生徒・学生が増えている。苦学生を支える奨学金も有利子化が進み、本来の役割が果たせていない。
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毎日新聞 2009年7月13日 0時36分