先週の金曜日、
恒例の第４０回大宅壮一ノンフィクション賞と
第１６回松本清張賞の授賞式が帝国ホテルで催された。
この二賞は、芥川・直木賞や菊池寛賞を執り行う
財団法人日本文学振興会の催しもので、文藝春秋が後援している。
大宅賞は、
ノンフィクションを書かれる作家や作品を審査、
選考をして授賞作を決める賞でノンフィクションの世界では
芥川・直木賞に匹敵する社会的に認知されている賞だ。
選考委員は、
猪瀬直樹さん、関川夏央さん、立花隆さん、西木正明さん、藤原作弥さん、柳田邦男さん。
物凄い書き手、読み手の方々だ。
清張賞は、
伊集院静さん、大沢在昌さん、桐野夏生さん、小池真理子さん、夢枕獏さんと
素晴らしい選考委員が並ぶ。
この賞は、長編の作品、エンターテーメントの新人賞のようなものだ。
原稿用紙３００枚〜６００枚
（私の記憶違いもあるので詳しくは、日本文学振興会に問い合わせて欲しい）。
新人作家が書くには大変な分量であるが、
現在推理小説のみならず、一般の小説、時代、歴史小説や日本古代史まで
幅広く対象になっている。新人賞の中では、一番の賞だと私は思っている。
帝国ホテルの正面玄関で
新進気鋭の作家月影禅君と待ち合わせて３階の会場に向かった。
今回の受賞者は、大宅賞が講談社から刊行された
『キャパになれなかったカメラマン ベトナム戦争の語り部たち』の著者平敷安常さん、
清張賞が『アダマースの饗宴』の著者牧村一人さんである。
牧村さんの作品名は、最初『六本木心中』だった。
この発表の時、これをどうするのだろうと私は思っていた。
なぜなら、『六本木心中』は故笹沢左保さんの名作のひとつと数えられていたからだ。
基本的には、本の題名には著作権がない。
これを規制してしまうとタイトルが付けられなくなる。
しかし、後から付ける者の見識が残る。著作権がない、
侵害がないと言っても道義上のことが残るだろう。
『０の焦点』や『砂の器』を付けて良いだろうか？
『羅生門』や『坊ちゃん』は、付けられないだろう。
今回は、改題をしていた。
笹沢ファン、担当したものにとってはありがたかった。
月影禅君は、近々作家デビューが決まっている若者で、
授賞式等の会場の雰囲気を知ってもらいたく私が誘った。
非常に素直で素敵な若者で、イケメンである。
お父さんも小説家で、きっと彼は、お父さんの背中を見てそだったのだろう。
小説は、完璧で新人らしい荒さもある。
子供のころから社会の中で働いてきたので、
人生を、人間を、社会を知っている。
本来は、一度社会人になってから２５歳以上で小説を書くのを勧めるのだが、
子供のころから社会人として揉まれてきたのだから、
何をかいわんやである。楽しみな青年だ。
帝国ホテル３階の会場は、とても混雑していた。
選考委員の挨拶、選考の過程が始まっていた。
大宅賞は、関川夏央さんが選考委員を代表してマイクの前に立たれていた。
清張賞は、大沢在昌さんの番らしい。
禅君は、１０００人近くのお客の渦に飲み込まれて呆然としていた。
禅君をパーティーに誘ったのは、この日が始めてではなかった。
その授賞式の３日前のことだった。
以前から私が書いた『菊池寛急逝の夜』の出版記念会をやろうと、
集英社のＴさん、光文社のＭさん、
そして白水社の本を担当してくれた和気さんが幹事団を組織してくださり、
記念会を催してくださった。
会場は、梅雨にもかかわらず満員になっていた。
発起人の大沢在昌さん、逢坂剛さん、勝目梓さんも話しをしてくれた。
伊集院静さんは、新人賞の選考に重なっていたのでお顔は、
見ることが出来なかったが、渡辺淳一さん、井上ひさしさんのお話が聞けた。
澤村藤十郎さん、竹田真砂子さん、丸茂じゅんさんも舞台に乗ってくれた。
そこに来てくれた菊池寛作家育成会出身作家藤村与一郎さん、
そしてデビューまじかな月影禅君は、大作家たちの前で目を白黒されていた。
もう少したてば、
彼らもゲストとして各会の主賓になってくれると私は信じている。
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