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【私はこうみる ウイグル暴動】張亜中・台湾大学教授

7月12日7時57分配信 産経新聞

 ■胡錦濤政権基盤 むしろ強化か

 ウイグル暴動発生の背景に3つの要因を指摘できる。まず新中国成立以来の共産党政権の辺境政策、民族政策の矛盾だ。

 共産党政権は新疆の石油を極めて低い価格で買い上げる一方、工業製品を高価格で売りつけ(辺境を搾取し)た。政治犯収容所や核実験場も設けた。さらに漢族の入植を大々的に進めた。1949年には新疆ウイグル自治区の漢族人口は全体の4%だったのにいまは41%に増えている。これらが新疆のウイグル族の不満や不安を拡大した。

 次に91年のソ連崩壊でウズベキスタンなど(トルコ系民族国家)が独立したことが、同じトルコ系ウイグル族の独立心を鼓舞した。

 さらにグローバル経済の進展が中国の民族間所得格差を拡大し、矛盾を増幅している。西部大開発で漢族は大きな利益を得たが、ウイグル族はそれほどでもないからだ。9・11米中枢同時テロ以降は(イスラム教徒の)ウイグル族に対する内外の警戒・差別が強まり、彼らの孤立感・喪失感を強めた。

 今回の暴動のきっかけは広東省韶関(しょうかん)市の玩具工場における漢族とウイグル族のトラブルだった。工場経営者は政府の少数民族政策に沿って、1万人の工員中600〜800人のウイグル人を雇用していた。しかし南方の広東人とウイグル人では考え方や生活習慣に差がありすぎた。

 しかし、ウイグル暴動が再拡大することはないだろう。欧米諸国政府は暴動の当事者双方の自制を呼びかけるのみで、イスラム諸国も強い反応を示していない。中国外交はかなり成功しているといえる。

 胡錦濤政権へのダメージもなく、むしろ政権基盤がさらに固まるのではないか。暴動発生後すぐに帰国したことは、内政の安定を最優先する姿勢を内外に示す意味で賢明な選択だった。中国の株価にもまったく影響を及ぼしていない。

 (関係改善が進む)両岸(中台)関係への影響もないだろう。この問題への台湾の関心は薄い。国共論壇(年に1度の国民党と共産党のフォーラム)も予定通り11日から開催された。(談)

                   ◇

【プロフィル】張亜中

 ちょう・あちゅう 1954年、台湾台中生まれ。台湾の政治大学博士、ドイツのハンブルク大学博士、現職は台湾大学政治学科教授、両岸統合学会理事長。著書に「小国崛起」「両岸主権論」「両岸統合論」など。

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最終更新:7月12日8時46分

産経新聞

 

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