京都大学が非正規雇用職員を対象に2010年度から順次、雇い止めを計画しているとして、京都大学の本部構内にある時計台前で、非正規職員による抗議行動が続いている。7日は同大の入学式で、新入生やその保護者が大学を訪れ、正門前で記念撮影するなど新生活に希望をふくらませていたが、一方で非情な首切りが行われようとしている現実がある。東大と並んで日本を代表する最高学府での雇用問題は、製造業における派遣切りとは異質の問題が含まれている。
正門を入ったところに立つ時計台は、京大のシンボルとして親しまれてきた。その真ん前で同大の時間雇用職員で構成する労働組合「ユニオン・エクスタシー」が、やぐらを組んで24時間体制で抗議の座り込みを行っている。2月23日から続けているもので、テントや生活用品を持ち込んでの抗議行動だ。
時計台(写真左隅)の前に設置された座り込みのやぐら(京都市左京区の京都大学本部構内・撮影筆者)
発端は、地元紙の京都新聞が1月23日に報じた「京大100人雇い止め」という記事だった。記事によると、京大は10年度中に契約期限を迎える非常勤職員約100人について、契約を更新せず雇い止めする方針としている。対象となるのは05年度以降に採用された事務職員、研究員、看護師らの非常勤職員で、契約期間を上限5年としているため、その期限が来年度に迫り、雇い止めが断行されるというのだ。
この方針に抗議するため、時間雇用されていた非正規職員2人が中心となってユニオン・エクスタシーを結成、時計台前で座り込みを始めた。同ユニオンでは「全職員の半数の2600人が非常勤職員で、今回の上限5年の対象となるのは1300人います。来年度は100人を雇い止めするとしていますが、それ以降も毎年、雇い止めが行われる恐れがあります。私たちは大学当局の説明を求めて団体交渉を申し入れているところです」と説明している。
4月1日付の「京都大学新聞」も、この問題を1面トップで報じた。主要新聞も積極的に記事を掲載している。学内の最大労組「京都大学教職員組合」では現在、時間雇用職員を一律に5年で雇い止めする制度の撤廃を求めて署名に取り組んでいる。同ユニオンは、これまで約1万枚のビラを構内や大学前の交差点などで配り、連帯を呼びかけてきた。大学当局は7日の入学式を前に、やぐらの強制撤去を匂わせていたが、この日に動きはなかった。、教職員や学生の有志も大学当局に要望書を提出するなど支援の輪が広がっていることも、大学側の動きを封じ込めているようだ。
雇い止め問題を報じた京都大学新聞4月1日付
やぐらは「くびきりアイランド」と名づけられ、切り取られたマグロの頭を供えるなど強いアピールを行ってきた。同ユニオンでは「非常勤職員の85%は女性で、賛同を得るために今後の活動方針の練り直しを進めていますが、取りあえずはカフェ形式で誰でも気軽に立ち寄れるような場所にしたい」と7日からやぐらの「改装」を始めた。この日、入学式に訪れた新入生や保護者は遠巻きにやぐらを見つめていた。
大学側が団体交渉に応じないため、同ユニオンは先月末に京都府労働委員会にあっせんを申請、団体交渉に応じないのは不当労働行為にあたる、として追及する構えを見せている。「製造業などでの首切りも問題ですが、京大の場合には経営が黒字であるにも関わらず、雇い止めしようとしているところに悪質さがあります。正規職員や教員から、仕事に慣れた非正規職員が辞めさせられると困る、という声を聞いています」と同ユニオンの井上昌哉組合員は話しており、大学当局が非正規職員を雇用調整弁にしようとしていることに憤っている。
関連リンク
・
京都大学ホームページ
・
ユニオン・エクスタシー(ブログ)
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