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「5年で首切り」に抗議 京大非常勤職員がスト

「京都大学時間雇用職員組合」のメンバーの男性職員二人が、京都大学構内で無期限ストライキを決行中である。これは、非常勤職員に対し「5年以上は契約更新しない」という大学側の規定に抗議するもの。スト中のメンバーは、「低賃金パート労働が、若者や、おじさんにも広がってきた。京大もその典型例だ」と言う。
京都 雇用 NA
「5年で首切り」に抗議 京大非常勤職員がスト | ストライキ決行中の看板。立て看を見て、大学時代が懐かしくなったが、「スト決行」はあまり聞いたことがない。(撮影すべて筆者)
ストライキ決行中の看板。立て看を見て、大学時代が懐かしくなったが、「スト決行」はあまり聞いたことがない。(撮影すべて筆者)
 京都大学・時計塔前で、二人の男性非常勤職員が座り込んでいます。彼らは、「首切り」に抗議して、ストライキを行っているのです。この場所を「派遣村」ならぬ「首切り村」として、2月23日以来、2月25日の入試の日も含めてずっと生活しておられます。

 この方たちは「京都大学時間雇用職員組合」のメンバーで、今年5月に大阪・長居公園で行われた「大輪まつり」の際にもお会いしています。

 私が取材した2月28日は天気がよくて大掃除ということで、テントは奥へたたんでいました。しかし、「ストライキ決行中」というデカい看板。そして彼らが入るドラム缶で作った風呂。これには「5年でクビ」というメッセージがありました。

 そして、市場でもらってきたマグロの頭で作ったオブジェ(?)「首切り」。彼らの怒りが伝わってきます。なぜ、彼らはストライキを行っているのか。その背景を彼らから聞きました。

「5年で首切り」に抗議 京大非常勤職員がスト | 魚市場でもらってきたマグロの頭で作った「首切り」というタイトルの置物(?)。
魚市場でもらってきたマグロの頭で作った「首切り」というタイトルの置物(?)。
■非常勤職員が半分近い、京大の実態
 京都大学の職員は約5400人。図書館や事務、教授の秘書(正式には学部の事務局)などにいます。そのうち、なんと2600人が非常勤職員です。座り込んでいるのは男性ですが、非常勤職員のうち85%程度が女性だということです。

 非常勤職員は、京都大学が独立行政法人になる前、「日日雇用」と呼ばれ、3月31日だけは任期の空白にして、4月1日からまた契約更新というスタイルをとってきました。空白期間を設けるのは、そうしないと違法になるからでした。欠員が出ればまず正規職員採用を優先させ非常勤にはなるべくしない。本来はそういう趣旨でもあります。
 
 ところが、現実には大学当局は、これを逆手にとって1日だけ空白を設けて、4月1日から再雇用するという手続きを毎年繰り返してきました。毎年「新規採用」だから、給料も上がりません。それこそ、時給900円から上限は1200円程度です。月々の手取りは12万円程度です。そして、そういう人たちが、実際は「正規職員と同じ仕事」をしている場合も多く、たとえば学部の図書室では、女性非常勤職員が一人で実質的に仕事をこなしている場合もあるそうです。

「5年で首切り」に抗議 京大非常勤職員がスト | ドラム缶で作った風呂。「5年でクビ」と大書。
ドラム缶で作った風呂。「5年でクビ」と大書。
■「首切りのための首切り」
 そして当局は、2005年度以降に採用された人については、今度は「1日あける」というテは使わなくなったものの「5年以上は契約更新しない」という規定を作ったのです。当然、2010年度には5年の期限が来てしまう人が発生し始めます。当局は、それをそのまま適用すると発表しました。

 ところで、大学当局は予算カットのために雇い止めにしているのでしょうか。そんなことはありません。期限が来た人の次には、また別の人を雇って穴埋めするのです。

 せっかく同じ仕事をしていて慣れている人も多いのに、また新人を採用したのでは、元の木阿弥ではないでしょうか。実際、佐賀大学では「3年」を期限としていましたが、最近その条項が撤廃されたそうです。

 京都大学のやっていることは、お二人によれば「首切りのための首切り」に過ぎず、「ひどい待遇に不満が出る前に切ってしまおうという狙いだろう」ということです。

■女性労働の搾取打破をも目標に
 また、メンバーは「5年条項が撤廃されても問題解決にはならない」「そもそも、これは女性労働の搾取の問題でもある」と訴えています。

 主婦のパートの仕事として位置づけられていた歴史が、ここでもあったのです(民間でも、役所でもそうですが)。 主婦のパートということで、昇給なしということも正当化してきたのです。彼らは「低賃金パート労働が、若者や、おじさんにも広がってきた。京大もその典型例だ」と指摘します。「扶養家族制度を前提につくられた差別的な非常勤職員の賃金体系、最初から『これだけでは食っていけない』賃金体系を多くの人に押し付けるのは無理であり、抜本的な制度の組み換えが必要」と、語気を強めていたのが印象的でした。

■官僚理事に誇り踏みにじられる
 さらに、労使交渉で当局を代表しているO理事が、労働者の誇りを踏みにじる言動を取っています。京大の理事は8人いますが、労務担当O理事は、文部科学省から出向した年収1700万円の官僚です。O理事は、「非常勤職員には配置換えなど業務責任を課していない」、「非常勤の業務は臨時的・補助的」、「新たな人を雇うまでだ」と言い放っています。

 正職員と変わらぬ仕事をしている非常勤職員にとって、誇りを傷つけられるような発言です。メンバーは「自分たちが首を切られる前にO理事の首を切るしかない」と、ストライキを決行するにいたったのです。

 何も現場がわかっていない官僚に暴言を吐かれて引き下がっていられるか?!自分たちにも意地がある!、そういう心意気をお二人から感じました。私も、世の中全体をも変えていこうという心意気に大いに共感しました。彼らは、自分だけのことを考えているわけではないのです。

 雨宮処凛さんをはじめ、多くの方々が応援のメッセージを寄せています。もちろん、大学の正規職員を中心とした労組も彼らの味方です。私も、貧困を撲滅し、男女共同参画を進めるという立場から、お二人に連帯したいと思います。
◇ ◇ ◇

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[42375] 京都大学は傲慢です
名前:藤重典子
日時:2009/03/12 04:46
博物館へ行こうとすると書類に「身分」の記入欄がありました。
「身分」とは地位の上下序列を指します。
大学人なら「所属」でいいはずですが、わざわざポストを書かせるという思想の大学です。
日本赤軍などを出す馬鹿大学です。
ものが考えられないのでノーベル賞は理系しか取れません。
難しい試験を通ったのは、家庭教師を雇えたとか参考書が買えたとか塾の代金が払えたという経済的理由にすぎません。
せっかく熟練した非常勤職員を解雇するのは、新人研修の無駄を忘れ、非常勤の賃金の上昇を恐れたものと考えられます。
とにかく非常勤の生活問題すら考えられない大学ですね。
ストライキも無視されそうですが、応援いたします。
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[41851] 文部科学省も当然オールジャパンの視点であるべきでしょう
名前:さとうしゅういち
日時:2009/03/02 23:23
 私の持論は、「国立大学は国営に戻すべし」です。多分、そこから考え方が違うでしょう。学費も無料化。ただし、出るのは難しくするればよいでしょう。

 したがって、「小さな政府論」には反対です。

 将来的には、負担を重くする方向でいいんじゃないかと思います。ただ、消費税よりは、低所得者層に配慮して、所得税から先に手をつけるべきでしょう。

 そもそも、税金は、誰もが、大なり小なり、お世話になります。それが、民主的なコントロールのもとに行われればよいわけです。「税金を使ったものが、アプリオリに悪である」かのような雰囲気をやまさきさまの書き込みから感じてしまうのは、気のせいでしょうか?

 やまさきさまの理屈をどんどん、突き詰めると、「困窮した人が生活保護に頼るのもけしからん」という話になってしまうのではないですか?

 しかし、まずは、税金を任せるに足りる、信頼できる政治にさせてこなかったことへの総括がなければならないでしょう。

 なお、それこそ、文部科学省も税金を使った国の機関ですから、他省庁の政策の足を引っ張るようなことはすべきではないでしょう。

「雇用は文部科学省の業務ではない」と言い切ってしまうことは、それこそ、今や唾棄すべき縦割り行政ではないですか?

厚生労働省として、一応、正規と・非正規の格差是正や雇用維持について、企業に対する要請など、乗り出しているときですから、それに協力する方向で考えるのが当然でしょう。厚生労働省に対して、前(?)から鉄砲を撃つようなまねはすべきではない。

 文部科学省が「俺は関係ねえ」ではすまされないでしょう。

 麻生総理でさえ「官僚はオールジャパンの視点で」といっているときです。
[返信する]
[41843] 返信
名前:やまざき・けんすけ
日時:2009/03/02 22:06
 同じ内容を二度繰り返して書くつもりはありません。
 
 先の文章を熟読ください。

 個人的には、佐賀大学の判断は誤りと判断いたします。

ーーー
 一定以上の年齢層の、再就職や転職が困難なことは、経産省や厚労省の管轄と責任です。

 文科省やその系列職員が、業務で関わることではありません。
 (業務外に個人で活動するのは自由ですが。)

 この問題の深刻さ自体は、私もわかります。

ーーー
 国立大学職員は、教職・正規職員・非常勤含めて、
 個人の能力や全体の予算に応じて、
 今後リストラにさらされるのは当然です。

 教職や正規職員の異常高給も、是正されなければなりません。

 理由は、最初の私の文章を、熟読してください。

ーーー
 天下りなどは論外ですが、
 国立大学法人職員は、一般職であれ、自身らも税金に寄生する官僚の端くれであることを忘れないほうがいいと思います。
[返信する]
[41839] 「自分たちだけさえ」ではない
名前:さとうしゅういち
日時:2009/03/02 21:05
わたしは当事者ではないから、そもそも質問に答える資格はありません。

したがって、ご自分で、リンク先の組合のHPから、連絡を取られたらよいと思います。

ただ、以下、個人的な見解としては、「自分さえよければよい」なんて、けちなことのために座り込みをしているわけではない、と断言します。

「扶養家族制度を前提につくられた差別的な非常勤職員の賃金体系、最初から『これだけでは食っていけない』賃金体系を多くの人に押し付けるのは無理であり、抜本的な制度の組み換えが必要」
この抜本的な組み換えを、ストライキにより、アピールしているわけです。

 京都大学内部にとどまらない、官民問わない、かなり大きな話テーマです。制度の組み換えは待ったなしでです。

日本国憲法25条に規定する生存権は何人にも保障されています。

今までの仕組みでそれが保障できなければそれを組み替えるのは当然です。

 それができない公務員(政治家)は、選挙により、全員落選させるべきです。(憲法15条)。

当然、わたしのようなそれこそ正規職員であれば、今後、賃金が上がるにつれて、税金をもっと納めるようにする。そのかわり、今よりも社会保障(雇用政策も含め)が強化され、一人一人が食えるような形にすればよいわけです。中間層以上の所得税率は日本は異常に低いのです。

ほかにも、選択肢はいろいろあるでしょう。

そういうトータル的な改革につながる、大きな話を彼らはしているわけで、「自分たちだけさえ」ではないのです。

せっかくのご質問ですが、あまりにレベルが違う話です。

わたしは実際には、当事者ではないからお答えしようもないですが。組合のブログから質問を送られたらいかがでしょうか?

なお、現時点では、それなりの年齢に達した人が、現実に就ける職業などなかなか見つかりません。(表面上、ハローワークに求人があっても、では実際に面接に行ってみたら・・、というケースはいくらでもあるでしょう。)

たとえば、介護が人手不足といっても、かなり難しい技量を要求されます。誰でもできるわけではない。

そもそも、日本は欧州よりも、積極的労働政策が薄い。もともと、失業をしないことを前提とした仕組みですから、手薄なのです。

また「難しい試験を通った正規と、簡単な選考の非正規」というのは、よく傲岸不遜な正規職員が、陰で非常勤職員を見下す際に使う言葉ではあるかもしれません。

 わたしも世間的には「何十倍の難しい試験を通った」と言われる正規職員ですが、そのような傲岸不遜な立場には全く同意できません。

 非常勤職員は、わたしのような若手と比べても3倍余り、そして、年配の正規職員とは5倍、6倍、7倍と差がついているのはまったく不合理でしょう。

 それこそ、あの橋下大阪府知事でさえも、就任直後には、外郭団体における、府庁からの天下り職員と、現場の非常勤の6倍という待遇の差に憤っていたわけです。

 彼はそれへの府民の怒りをうまく、正規公務員たたきに悪用したのですが・・。
[返信する]
[41835] 質問2
名前:やまざき・けんすけ
日時:2009/03/02 18:56
 付け加えれば、
 簡単な選考で通っておいて5年も食わせていただいて、さらにまだそこに居座ろうということですか?

 任期があることは、その人にとっては転職を余儀なくされるが、他の人にとっては、新しい雇用や職種で経験を積む「機会」が与えられるということですよ。

 他の人にいつまでもチャンスを与えず、自分たちだけ「既得権益」を守って幸せならいいのですか?

 民間企業ならともかく、非常勤とはいえ、公職なら税金に寄生して国民に食わせてもらっている立場ですよ!

ーーー
 転職は、経済的に心理的に負担を伴います。
 リスクもあります。
 当たり前です。

 「おじさん」「女性」に本当にそこそこの転職雇用すらない、生活保護しか生きる方法がない、それが長く続く、というなら、それは大問題です。
 
 しかし、それなりの転職先が雇用保険の期間内にあって、それでも転職したくない、自分さえよければいい、と言っているなら、それは

 「甘え」「甘ったれ」

 だと思います。

[返信する]
[41834] 質問
名前:やまざき・けんすけ
日時:2009/03/02 18:35
非常勤職員の採用制度について、記述してほしいと思います。

それと、正規職員の採用制度との違いについて、記述してほしいと思います。

簡単な面接などで採用されるのなら、難しい試験で採用される人と、同じ待遇ではおかしいのではないでしょうか?

私も独立行政法人で非常勤職員経験があります。
お気持ちはそれなりに察しますが。

ーーー
少子化の時代、学校の職員数が現状維持でいいのですか?

そのお金(国の予算)はどこから来ているのですか?
国民の税金ですよね。

ハローワークには、非常勤職員程度の雇用はまったくないのですか?

もし雇用がないならないことを、あっても問題がある雇用ばかりならそのことを、正確に記述しないと、他人への説得力が感じられません。

[返信する]

6月29日〜7月4日 

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