若手サックスプレイヤー・小林香織さん。2005年のデビュー当初は、その愛らしいルックスに注目が集まりがちだったが、現在、自分がリーダーを務めるバンドでレコーディング・ライブ活動を行い、ミュージシャンとして新しい世界を着実に切り拓いている。そんな小林さんに、楽器、そして音楽への熱い思いを聞いた。
小林香織 さんprofile
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PROFILE
1981年、神奈川県出身。母親がピアノ教師で、0歳からピアノで遊び始める。中学1年には吹奏楽部でフルートを始め、高校2年でサックスを始める。クラシカル・サックスを原ひとみ氏に師事。 高校3年でジャズに転向。 2000年、洗足学園音楽大学入学、ジャズ・サックスをボブ・ザング氏に師事。 2004年、洗足学園音楽大学ジャズ科卒業。在学中より都内のジャズ・スポットで定期的に演奏を開始。 2005年、アルバム『Solar』でデビュー。6月、国立代々木競技場で開催された「CROSSOVER JAPAN '05」で村上“ポンタ”秀一(ds)、笹路正徳(kbds)、野村義男(g)、日野賢二(b)からなるスーパー・バンドと競演、一躍注目を集める。2006年からは台湾・韓国でも活動を開始。2007年、3rdアルバム『Glow』リリース。最新アルバムは、2008年6月リリースの『Shiny』。現在、テレビ、ラジオなどで、ナビゲーターとしても活躍している。
小林香織オフィシャルウェブ
このページに掲載されている情報は、2008年11月現在のものです。
サックスと出会った瞬間に、これだ!と思った
いま思うとすごくおませだったと思うんですが、中学・高校と洋楽しか聞きませんでした。おこづかいは全部バーシアにつぎ込んで、カラー・ミー・バット、ウェンディ・モートン………どれもCDが擦り切れるほど聞きました。私のまわりには洋楽好きな友達が多くて、すごく恵まれていたと思います。あの時代、あの友達がいなかったら、いまの私の音楽性はなかったかもしれません。楽器は中学校では吹奏楽部でフルートを始めたのですが、その時は、あまりのめり込まなかったんですね。でも、高校2年生でサックスと出会った時は違いました。たまたま隣のお姉さんがサックスを持っていたんですが、それを貸してもらって初めて吹いた瞬間に、本当に自分がやりたいことが見つかった! と思ったんです。今度は、やっていくうちにどんどんはまっていって、サックスで音大に行く、と決めました。いまだに女性でサックスを選ぶのは珍しいと言われることがありますが、私には最初からほとんどそういう感覚はなかったですね。一人の人間としてサックスを吹いている、という意識しかありません。
サックスとフルート、それぞれの音の魅力
サックスとフルート、二つの顔を持っているのが私のアピールポイントだと思っています。フルートはサックスとぜんぜん違う世界が作れるので、レコーディングでもライブでも、必ず吹くようにしています。フルートには可憐で神秘的なイメージがあるけれど、ワイルドな一面も持っているのが魅力。私はむしろそこを引き出したいと思っているので、いつもロックフルートのような、ザラッとした音質で吹いています。一方、サックスの魅力は、金管の男らしい音と、木管の女性らしい音、その両方を併せ持っているということ。私、本当にサックスの音色に惚れ込んでいるんです! 1年ほど前には、自分のバンドに2人のアルトサックスプレーヤーを招いて、「スリーサックス」というライブをやりました。サックスは単音楽器なので一人では和音は出せません。だから、3本のサックスの音色で和音を奏でた時の気持ち良さ、幸せな感じには、本当に特別なものがありましたね。アレンジも全部自分でやったのでとても大変だったのですが、改めて、音楽の原点に戻れた気がしました。
吹きやすいサックスで、目指す音色を追求する
楽器はやっぱり、吹きやすいことが一番ですね。1音ごとにバラつきがあったり、吹きにくい楽器を無理やり使いこなそうとすると、そこにエネルギーがいってしまうけれど、吹きやすい楽器なら、音色やオリジナリティー、ニュアンス、感情表現などにエネルギーを注げますから。私がいま使っているのは、ヤマハの82Z。楽器としてのクオリティが高く、初めて手にした時からとても吹きやすかったので、これなら自分のカラー、自分の出したい音色が作れると思いました。私が目指している音色はジャズでもクラシックでもなく、ファンキーでエッジの利いた音。速弾きやテクニックより、1音でハートにキューピットの矢が命中するようなプレイを目指しているんです。実際、恩師であるボブ・ザング先生にジャズ・サックスのレッスンを受けていた時、先生のチューニングのAの音だけで、私は何度胸キュンな思いをしたかわかりません! 音色は単に練習すれば良くなるというものではなく、自分の人生がすべて出るものだから、普段からいろんな芸術にふれて感性を磨いていくことが大切だと思っています。
『Shiny』
発売:ビクターエンタテインメント
CD(通常盤) VICJ-61565
¥3,150(税込)
CD+DVD(初回限定盤) VIZJ-9
¥3,600(税込)
DVDには「Shiny」のビデオ・クリップと07年韓国公演のドキュメンタリーを収録