例えば、中国の台頭によって、日本が中国に「負けて」しまうのではないかとの議論がありますが、私は、勝つか負けるかではなく、「共に生きる」アジアの秩序つくりのために、日本は大事な役割を果たせるのではないかと思います。
戦後の日本は、国際秩序を与えられたものとして把握し、自らが国際秩序をつくるという発想は全くありませんでしたが、そのような受身の発想ではなく、たくましい構想力をもって、ダイナミックにアジア及び世界の秩序形成に関わっていくことが、これからの日本の戦略を考えるにあたって極めて重要だと思います。
共に生きるアジア、即ち「アジア共同体」構想を究極の目標に据え、その基本的な発想として、「隣国を豊かにすべし」の政策(Enrich Your Neighbors Policy)を軸に、中国の台頭について考える場合にも、むしろ中国の経済発展を助けて豊かにすることにより、先ず経済面では、低い賃金を日本と同じ位の程度まで引き上げていけば(たとえ50年かかろうともいずれそれは実現できる)、中国のほうが人件費が安いから中国に生産をシフトしようということもなくなり、生産が日本に帰ってきますし、中国の賃金が引き上げられれば、日本製品にとって13億人の巨大な輸出市場が誕生することになります。
更に安全保障面でも、経済が発展して民主化が更に進めば中国の女性の政治的発言力が強くなって、中国政府が戦争をしにくくなるということも期待できましょう。
そのための具体的道具として、日本は援助(ODA)を活用できるわけですし、将来的な構想として、「アジア通貨基金」を創設するためにアジアの諸国と共同で作業をすることも重要でしょう。また、自由貿易協定をできるだけ多くの国と結んでいくことにより、自由に貿易できるネットワークを積み重ねていくという手法もあり得ましょう。
日本がこれから世界に貢献すべきは、何よりも「平和力」と呼ぶべき新しい概念(コンセプト)であるはずです。 |