きょうのコラム「時鐘」 2009年7月12日

 そろそろアジサイは見ごろを終えるのだろうか。ぬれた葉には、カタツムリが似合う。愛らしい生き物だが、殻をとれば、ナメクジ。若者の口を借りると、途端に「キモクなる」

夕暮れに、コウモリが飛び交う。頭上の黒い影を目掛け、長い棒を振り回して遊んだ。めったになかったが、棒に触れて落ちたコウモリを見て、気味の悪さに驚いた。こいつは鳥なのか、ネズミのお化けか

ナメクジもコウモリも実に「キモイ」。が、そう思うのは人間の勝手でしかない。塩をかけ、棒を振り回して「退治」するとき、決まって小さな心の痛みも覚えた。うっとうしい梅雨の季節に、不快な思い出がよみがえる

若者のはやり言葉には感心するが、この「キモイ」は、どうにも好きにはなれない。悪意のトゲや相手を強く拒む冷たさがこもっているようで、不快に響く。友人にまで、そんな言葉を投げつけるなど、言語道断であろう

「キモかわいい」というのを教わった。褒め過ぎだが、これならナメクジもコウモリも文句は言うまい。良い言葉があるのだから、耳障りな「キモイ」など、さっさと廃(すた)れてほしい。