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【社会】

開業医が拠点病院診療 休日に“応援” 人手不足補う

2009年7月12日 朝刊

 医師不足が深刻な拠点病院で、地元の開業医が夜間や休日に応援診療をする取り組みが各地で広がっている。病院がなくなると地域医療が崩壊するという危機感が背景で、病院側も大歓迎。応援診療を助成する自治体も出始めている。

 「食事時間すらなかった勤務医の負担が大幅に軽減された」。伊那中央病院(長野県伊那市)の藪田清和事務部長は応援診療を高く評価する。同病院の地域救急医療センターでは二〇〇七年六月から、地元医師会の開業医が午後七〜十時に軽症患者を診療している。

 病院は七人いた救急専従医が三人に急減。二十四時間救急の維持が困難となり医師会に協力を求めたのがきっかけだった。専従医が六人になった現在も開業医約二十人が交代で診療を応援している。

 報酬は一回五万円。病院側の支出は年間約二千五百万円と決して少なくないが「若手医師がベテランの開業医から診療方針の意見を聞く機会にもなっている」と予想外の効果もあるという。

 徳島県医師会は今年六月、県内三カ所の公立病院、診療所で夜間や休日の応援診療を始めた。同会の大塚明広副会長も月一回、車で二時間以上離れた県立病院の休日診療を担当。「拠点病院がなくなれば開業医は患者を紹介する先を失う。大学医局の医師派遣システムが機能しない今、病院と開業医の連携は重要」と強調する。

 埼玉県は〇八年度、応援診療への助成制度を創設、これまでに民間を含む三病院の小児救急に導入した。県の担当者は国に対し、応援診療を促進するため診療報酬上の算定基準を新設するよう求める。しかし「通常の診療も抱える開業医の負担は大きく、応援診療は“対症療法”」とも指摘、医師不足の根本的解消が必要と訴えた。

 

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