この人物のオモテとウラ　布施明（歌手）

　自作の童話が映画化される、と報じられた。布施が書いた童話は０７年３月に発売した「この手のひらほどの倖せ」（文芸春秋）。高度成長期に、両親のいない兄弟が力を合わせて生きていく物語で、０５年、歌手活動４０周年記念コンサートで朗読したところ、好評だったことから出版された。

　童話の内容を布施自身の生い立ちと思い込む読者もいるが、布施が人から聞いた話を膨らませて作ったフィクションだ。

「布施はかなりの読書家で、書くのも好き。これまでもエッセーや小説を出版し、歌の作詞もしている」（雑誌記者）

　映画は「手のひらの幸せ」というタイトル。この７月に新潟で撮影され、来年１月、公開予定だ。

　意外な“顔”を持つ布施だが、もちろん本業の歌手活動も忙しい。毎年ＣＤを出し、今年は４月に女性アーティストの名曲をカバーした「ＢａｌｌａｄｅＩＩ」をリリースした。コンサートも数多い。還暦をすぎているが、歌声は衰えていない。

　１９４７年１２月１８日、東京・三鷹市で両親、兄２人、姉１人の６人家族に生まれた。本名は布施晃。一番上の兄・勉氏は横浜市立大学の学長だ。

　音楽にはほとんど無縁だったが、中学２年のとき、親友の影響で一気に音楽にハマった。都立府中高校進学後、オーディション番組「ホイホイ・ミュージック・スクール」（日本テレビ）に出演してスカウトされ、６５年、「君に涙とほほえみを」で歌手デビュー。７５年、「シクラメンのかほり」が大ヒットした。

　しかし、人気とは裏腹に、専門的に音楽を学んでいないのがコンプレックスで、当時は歌手を一生続けるつもりはなかった。８０年、ハリウッド女優のオリビア・ハッセーと結婚して渡米したのも、音楽から離れたかったから。ところが、渡米するとまもなく歌や演技を本格的に学びたくなり学校に通った。８９年、離婚して帰国。以来、熱心に歌手活動を行ってきた。

　再婚はせず独身。だが、０６年、写真誌で６歳下の元女優と約５年、交際していると報じられた。

「その女性というのが、元妻オリビアにそっくり。じつは、オリビアが再婚した男も布施にそっくりだったとか。２人の間の一人息子は毎年、夏休みを日本で過ごし、布施がよく面倒を見ていた」（雑誌記者＝前出）

　意外な素顔がいっぱいあるようだ。

（日刊ゲンダイ2009年7月3日掲載）