テレ朝の独壇場か

●月刊誌の上半期視聴率ランキングに７本

　ドラマの主流は漫画原作もの、若者向けから刑事ものに移行している。「日経エンタテインメント！」（８月号）に掲載された今年上半期の「全ドラマ視聴率ランキング」を見てみると、トップ１０のうちミステリー＆刑事ものが７本も占めている。

　暫定１位は放送中の「ＭＲ．ＢＲＡＩＮ」（ＴＢＳ）、２位は「ＢＯＳＳ」（フジテレビ）だが、中でも評価が高いのはテレビ朝日だ。内野聖陽の「臨場」が平均１４．５％で４位、名取裕子の「京都地検の女５」が平均１２．２％で１０位にランクイン。若者受けするようなアイドルなどが見当たらず、地味なキャスティングながら好成績を残している。

　また、７月ドラマを見てもテレ朝の刑事ものが目を引く。２日にスタートした「科捜研の女」の初回２時間スペシャルは１５．９％、１日スタートの「新・警視庁捜査一課９係」は１３．５％と好スタートを切った。いまや「刑事ものといえばテレ朝」といってもいい。

「テレ朝はフィルム時代から『土曜ワイド劇場』などのミステリーや刑事ものを作ってきた伝統があって、その財産をしっかりと生かしています。刑事ドラマを熟知したプロデューサー、しっかりした物語を書ける脚本家がいて、きちんと練り込んでドラマを作っている。この一貫した姿勢が、『相棒』や『京都迷宮案内』といった人気シリーズにつながっている」（放送評論家の松尾羊一氏）

　７月ドラマのラインアップを見てみると、テレ朝は前述の２本に「メイド刑事」を加えた３本の刑事ドラマを放送する。他局に刑事ものは見当たらないから、テレ朝が視聴率を伸ばすのは確実だ。

　この“ブーム”に便乗して他局も刑事ドラマにシフトする可能性もあるが……。しかし、ただ飛びつけばいいというわけではない。

「刑事ドラマは、謎解き、現場捜査、警察内部、犯罪心理、人間ドラマなど、いろいろな角度から作品を作ることができます。しかし、これまでもあの手この手で数多くの刑事ものが作られてきた分、安易な脚本やお手軽な演出でドラマを作ると、すぐに視聴者に見抜かれてしまう。例えば『ＭＲ．ＢＲＡＩＮ』は中途半端で内容が薄っぺらだから、大人の視聴者に見放されています」（前出の松尾氏）

　粗製乱造はダメ。人気だからといって刑事ドラマをナメてはいけない。

（日刊ゲンダイ2009年7月8日掲載）