わが家の晩ご飯に久しぶりにイワシのフライが出た。刺し身、かば焼き、つみれなどさまざまに楽しめるイワシだが、最近は食卓でもなかなか見かけない。
不漁で漁獲量が激減したことが原因だ。ピークの1988年に全国で449万トンあったイワシの水揚げは、2006年に5万3千トンにまで減少、高価になった。道理で口に入らなかったわけである。
イワシはどこに行ったのか。東北大名誉教授の川崎健さんの「イワシと気候変動」(岩波新書)によると、イワシは過去にも豊漁、不漁を繰り返してきた。数の変動は大気や海流など地球規模の気候変動と密接な関係がある。
日本近海、カリフォルニア沖、チリ沖の三つのイワシ漁場で豊漁と不漁の時期が一致しているのに気付いたのがきっかけとなり、「レジーム・シフト」と呼ばれる現象に気付いたそうだ。
不漁は、海水温が数十年単位で大きく変動し、稚魚の成長に適温でなくなることが原因だ。資源が低水準の時には、禁漁にしてじっと回復を待てばよい。
ところが現実に行われているのは、小さくなった資源を重装備化した漁船で捕りまくる乱獲の悪循環だ。これでは資源は回復できないと川崎さんは警鐘を鳴らす。健康にもよいイワシがたくさん食べられる科学的な資源管理が重要だ。