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第2回 ─ 30年間、先鋭であり続けるムーンライダーズ


掲載: 2006/12/07

ソース:『bounce』誌 0号(//)

文/村尾 泰郎




 今年でデビュー30周年。豊かな歴史を持ちながらも、歴史を感じさせないバンド、ムーンライダーズ。そのココロは、自分たちのイメージが固まる前にそれをブチ壊し、そのたびに生まれ変わってきたから。そして、メンバーそれぞれが、プロデューサーやセッション・ミュージシャンとして活動する職人でもあり、それそれがバンドに持ち帰ったものをアップデートする場として、バンド自体に〈生きた工房〉のような趣きがあったからだ。

 ムーンライダーズの母体になったのは、日本のロック史に残る名作『センチメンタル通り』1枚を残して解散した、はちみつぱい。74年には、同バンドに在籍していた鈴木慶一(ヴォーカル/ギター)、武川雅寛(ヴァイオリン)、かしぶち哲郎(ドラムス)、岡田徹(キーボード)に、鈴木博文(ベース)、椎名和夫(ギター)を加えてムーンライダーズが結成された。初仕事はアグネス・チャンのツアー・バンドで、そうやって〈定職〉を確保しておきつつ、やりたいことはムーンライダーズでやるというシステムが、その後のバンドの在り方に大きな影響を与えていく。

 76年に鈴木慶一のソロとして制作したつもりが、知らぬ間にジャケにバンド名が刷られていた『火の玉ボーイ』で、バンドは偶発的にデビュー。この作品から漂う無国籍性が70年代ライダーズを方向付けた。そして心機一転、バンド意識で挑んだ77年の『ムーンライダーズ』が実質的なファースト・アルバムとなり、細野晴臣も参加したエキゾ・ポップの秀作『イスタンブール・マンボ』で椎名が脱退。白井良明(ギター)が加わって、現在のラインナップとなる。

 ムーンライダーズの30年を大まかに分けるなら、こんな流れになる。まずは、『ヌーベル・バーグ』までの〈70年代シティー・ミュージック期〉。79年の『モダーン・ミュージック』でニューウェイヴを発見、驚くほどのスピードで吸収し、『マニア・マニエラ』で開花した〈80年代ニューウェイヴ期〉。一時期バンドを休止しながら、〈最後の晩餐〉で不屈の30代バンドとして復活。当時の最新機材を駆使して、サイバーな肉体性を手に入れた〈90年代アダルト・オリエンテッド期〉。そして、さらに深化し続ける21世紀……。

 なかでも特筆すべきは、バンドのアイデンティティーを確立した〈ニューウェイヴ期〉だ。80年の『カメラ=万年筆』で早くもダブに挑戦。続く『マニア・マニエラ』『青空百景』では、一気にテクノからポスト・ニューウェイヴまでを駆け抜けた。ザ・バンド的なはちみつぱいから出発して、XTCやディーヴォの方法論までを消化したムーンライダーズ。例えるなら、はっぴいえんどが解散せずにYMO的テクノ・ポップを展開。しかも、21世紀も解散していない、という離れワザを実践しているということだ。

 最新作『MOON OVER the ROSEBUD』の圧倒的なテンションに触れるにつけて、ムーンライダーズが30年もの活動を続けたこと、そして、それ以上にムーンライダーズがムーンライダーズであり続けた奇跡を、ロックの神様に感謝せずにはいられない。なお、今年4月の30周年記念ライヴの模様を中心に彼らの歩みを振り返る映画「マニアの受難」やTVCM曲集も控えており、彼らのお祭り騒ぎはまだまだ続く模様。あと、30年はいけるでしょ。ダメ?
ムーンライダーズの2006年作『MOON OVER the ROSEBUD』(moonriders)
はちみつぱいの73年作『センチメンタル通り』(ベルウッド/キング)


サントラ『PASSION MANIACS マニアの受難』(コロムビア)
12月13日にリリースされるTVCM曲集『MOONRIDERS CM WORKS 1977-2006』(ソニー)
ベスト盤『NEW DIRECTIONS OF MOONRIDERS vol.1』(クラウン)


文/桑原 シロー

タイムマシ〜ンに乗って代表作を聴きに行こう!


『火の玉ボーイ』 ワーナー(1976)
鈴木慶一のソロ第1作と捉えるべき一枚。レコード会社の意向により〈〜とムーンライダーズ〉と表記されたことは有名な話だ。はちみつぱいの後期にステージで演っていた曲も吹き込まれており、それまでの集大成とも言える小粋で洒落た慶一流ポップス集。ジャズ心も躍っている。



『ヌーベル・バーグ』 PANAM/クラウン(1978)
ニューウェイヴ夜明け前の一枚。メロディアスでソフトな感触を持つエキゾ風味の曲やモダン・ポップ然とした曲が並ぶ、愛らしい小品集だ。なかでもジョン・サイモンとミルトン・ナシメントのカヴァー曲や、細野晴臣の参加した“いとこ同士”が秀逸。



『マニア・マニエラ』 GT/ソニー(1982)
〈先鋭〉をじっくりと音で描いてみたところ、一時お蔵入りになった一枚。CD→カセットブック→LPという変則的な順でリリースされた本作は、MC-4を駆使した打ち込みビートと歪みを表現するサウンドをグチャっとミックスした、彼ら流のテクノ・ミュージックだ。



『青空百景』 GT/ソニー(1982)
『マニア・マニエラ』のお蔵入り決定直後にレコーディングが開始されたアルバムだが、本作では実験的な要素とポップな要素の掛け合わせが絶妙! “青空のマリー”をはじめ、彼らの代表曲とも言える良品を数多く収録し、ライダーズの入門盤としての評価も定着している。



『DON'T TRUST OVER THIRTY』 T.E.N.T/ポニーキャニオン(1986)
ポップに振り切ろうとする意志が針飛びを起こしたようで、その途切れ具合に得も言われぬ聴後感を与える一枚。闇雲な明るさがハレーションを起こしていて、聴くたびにチカチカしてしまうが、何よりも眩しいのは、名曲“9月の海はクラゲの海”だ。



『最後の晩餐〜Christ, Who's gonna die first?』 東芝EMI(1991)
長いブランクを経て発表した90年代の幕開け作。明確な輪郭を持ったキャッチーさがあるというか、理解しやすさが増した楽曲が満載だ。ライダーズ節炸裂の一枚、というか90年代以降の最高傑作と言ってしまって差し支えないだろう。

文/編集部

膨大かつ多種多様なメンバーのソロ・ワークをほんの一部だけご案内!!


 とてもじゃないけど文字数が足りない! 今年4月の30周年記念企画〈Vintage April Show〉では、4日間のライヴのうち2日がメンバー個々の別ユニットで構成されていたことも象徴するように、
ムーンライダーズのメンバーによる課外活動は実に膨大で、多岐に渡っています。まず鈴木慶一は、80年代に入るとポータブル・ロック時代から交流の深かった野宮真貴の81年作『ピンクの心』(Flying Dog/SS)をプロデュースしたり、高橋幸宏とTHE BEATNIKSを結成したりと精力的に活動を展開。今年に入って久々となるライヴ盤『THE SUZUKI PRESENTATION SOCIETY:LIVE AT BOXX』(メトロトロン)を発表した鈴木博文との兄弟ユニット=The SUZUKIや、
テクノ/アンビエントを指向したソロ・ユニットのsuzuki k1 7.5cc、さらに『座頭市』(Dreamusic)をはじめサントラも数多く手掛けるなど、貪欲に音楽性を拡散していきます。

 一方、弟の鈴木博文は、87年の『Wan-Gan King』を皮切りに、2003年の『bonyari bonyari』(AGENT CONSIPIO)まで、ソロ名義のアルバムを多数発表。
さらに、前述のライヴ企画にて久々に演奏を披露した、美尾洋乃と組んだアコギとピアノ主体のユニットであるMio Fouや、白井良明とかしぶち哲郎が参加したART PORTによる作品を、自身が主宰するレーベル、メトロトロンより発表していきます。

 また、白井良明は80年代からプロデューサー/アレンジャーとしてもその手腕を発揮。井上陽水が全曲の歌詞を提供した沢田研二のアルバム『MIS CAST.』(ユニバーサル)でほぼ全曲のアレンジを手掛け、他にもthe PILLOWSなど仕事量は膨大です。
そんななか、82年のソロ作『カオスで行こう!』(ソニー)ではロボットに変身したり、はたまた武川雅寛とのデュオ=ガカンとリョウメイ名義で発表した2001年作『東海道五次』(メトロトロン)では、
フォークやケルト音楽風味のアコースティックなサウンドを披露するなど、鈴木慶一に劣らぬ多才さを見せています。

 さらに、岡田徹はアコーディオン・ユニット=LIFE GOES ONや、
山本精一や伊藤忠治と組んだya-to-iなどでの活動が印象的。ya-to-iの2002年作『MENU』(Flavour)ではポスト・ロック/エレクトロニカを独自に解釈した先鋭的なアプローチを披露と、もうこんなところまで……。やっぱり文字数が足りません!

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