2009年7月9日3時2分
漢族に襲撃されたモスクの周辺には、砕け散った窓ガラスやテーブルなどが散乱していた=8日、中国新疆ウイグル自治区ウルムチ、奥寺写す
ウルムチの地図
【ウルムチ(中国新疆(しんきょう)ウイグル自治区)=奥寺淳】1千人以上の死傷者を出す騒乱があった中国・ウルムチは8日、治安部隊の大量投入でひとまず平静を取り戻したように見える。市内のウイグル族地区を訪ねると、7日にあった漢族の集団による襲撃の跡が残り、住居だけでなくイスラム教のモスク(礼拝堂)まで破壊の対象になっていた。
「300人ぐらいの漢族が突然モスクに石を投げ始めた。信じられない光景だった」
市街地南部に住むウイグル族男性(31)が話した。7日午後3時すぎ、1千人近くの漢族が現れ、その一部がモスクを襲い始めたのだという。
入り口にあった串焼きや焼き飯の屋台がひっくり返され、大釜も粉々に壊された。モスク1階の食堂のガラス製のドアが砕け、机やいすが散乱している。2階より上の窓ガラスが割られ、止めてあった車2台の窓ガラスも粉々に砕かれた。
近くの青果商のウイグル族男性は「誰かが投石を始めると、見ていた漢族が『もっとやれ』と叫び、拍手が上がった」と語る。警察は襲撃を止めようとはせず、「近づこうとしたら逆に止められた」。
モスクは毎週金曜日、ウイグル族が礼拝に訪れる神聖な場所だ。取材していると、近くにいる警察官が住民に「何も答えるな」と圧力をかけ、過敏になっている。
騒乱は当初、ウイグル族のデモから始まったが、ウイグル族の暴力を強調する報道に刺激された漢族の一部が暴徒化。ウルムチでは漢族の人口が圧倒的に多く、ウイグル族は守勢に立たされている。
モスクから東へ約1キロにあるウイグル族居住地区には7日午後、数千人の漢族がこん棒などを持って現れた。退役軍人のウイグル族男性(32)は「刃渡り30センチ以上の刀を持っている男もいた」と証言する。この男性はこん棒で顔を殴られた。