「ジャクソン兄弟物語 2009」 第七章

2009.07.04

9、「キング・オブ・ポップ」、敗北なき敗北者。
 そして、突然のニュース・・・。 
〜現在まで〜 



 ギネスの記録を塗り替えた「スリラー」の成功が、モータウンとの確執からくる復讐のモチベーションによってもたらされたことは前述した。特にジャーメインとヘイゼルの結婚がなければJ5からジャーメインが脱退することは無かったかもしれないし、そうなるとマイケルをとりまく歴史は変わったはずだ。歴史に「もし」はないが・・・。 

 80年代中盤以降のマイケルは自身の打ち立てた金字塔「スリラー」との戦いに明け暮れた。「ウィー・アー・ザ・ワールド(ほぼマイケルの作詞作曲、ライオネル・リッチーは歌い始めの数行だけ書いた)」、「キャプテンEO」、「BAD」、「ムーンウォーカー」。90年代の「デンジャラス」、「ヒストリー(ベスト&企画盤)」。2001年の「インヴィンシブル」などなど・・・。 

アルバム「BAD」より。史上最高のミュージック・ヴィデオのひとつ、「スムース・クリミナル」をどうぞ!! 
You Tube / Smooth Criminal

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 もちろん「スリラー」に比べるとすべて色褪せてみえてしまうが、「BAD」などは当時売り上げ記録世界第2位だったくらい超絶に大ヒットしており、はっきりいってこの結果でガッカリするほうがどうかしている(もちろん1位が「スリラー」)。 

 誰にも負けないのに、「自分にだけ」負ける。一度は過去の自分(子供の自分)に勝利したマイケルだが、今度の敵(成熟した自分)はあまりにも強力だった・・・。 
 敗北していないのに、味わう強烈な挫折感・・・。延々と続く駄目な兄弟や親との金銭面ビジネス面での確執。そして、整形によると言われる顔の急激な変化。「こんなふうになりたい」ということを全て叶えてしまうと、また足りないところに目がいくのは人の常なのだろうが、それにしても極端に振り切れるメーターの幅は一般的な人間からは想像すらできないほどだ。 

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 90年代以降、頂点を極めたマイケルに世間は冷酷だった。特に二度に渡る幼児虐待疑惑は彼の心をズタズタに切り裂いた。全世界の養護施設を数百回巡り、病気の子供に手を差し伸べることをライフワークにしているマイケルにとって、「子供をレイプすること」など想像もつかない濡れ衣である。 
 多額の金をせしめるために自分の子供も巻き添えにした、非人間的で虚言癖のある母親による証言はまったく整合性がなく、トム・スネッドン検事にとっては「まことに残念なことに」却下せざるをえなかった。 
 そして、警察検察が威信をかけてネヴァーランドをすみからすみまで(すべてのネットの履歴、銀行口座を調べ、壁や床までめちゃくちゃに掘り破壊しまくって)大捜索したものの、なんの証拠も得られず、無罪が確定した。これが事実です。 

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 ぼくは当初から自信を持って「無実」を断言して来たが、正直いささかの不安もなかった。 
 マイケルが善人だとか、常識人だとかそんなことを言うつもりはない。その逆で、マイケルは変人であり、非常識であり、変態だと思うが、中途半端な連中が考えるよりももっともっともっともっともっともっともっともっともっと変人であり、非常識であり、変態である!!!!といいたい。 

 もしもワイドショーのコメンテーターの喋ること、新聞社の人間が書くことが一般人の「常識」なのであるなら、ぼくは喜んで非常識と言われたい。あんなに何も知らないのに、昨日仕入れたばかりの適当な一夜漬けで何かを語る自信などぼくにはないしね・・・。 

 ともかくマイケルは「変わっている」けれど、彼が子供をどんな形にせよ傷つけるだなんて、そんなことは絶対に、ないのだ。 
マイケルの件で色々勉強してきたぼくが言うのだから信じて欲しい。彼は「倒錯した小児性愛者」ではない。 

 あの裁判はまさに茶番劇。時間とお金と芸術の大いなる損失。世界一のリンチ。日に日に傷ついてゆくマイケル・・・。 
 しかし、そんな状況に日々憤慨し、悲しみながらも、ぼくにはそれすらもわかっていたのだ。彼ほど、強靭な心を持つ男はいない。必ずマイケルは起き上がる。 
 世界一タフでないと、世界でナンバーワンになどなれないのだから・・・。 

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 今回の来日以降、ようやく、マイケル・ジャクソンという類い稀なる天才に、笑顔が戻りはじめた気がする。彼は現代のモーツァルトである。「アマデウス」という映画で、晩年のモーツァルトは市民から馬鹿にされ、疎外される。天才であるが故に、その時点での常識をこえているからだ。 
 そして正直、アホなところもいっぱいある。ちゃんとせーよ!とも思う。しかし、人類史上これほどのスーパースターはしばらく現われない、と断言できる。東欧でも、アフリカでも、南アメリカでも、アジアでも、彼の歌とダンスは世界中で愛されているのだ。今後も、いやこれからこそ、どんどん理解者は増えていくと想像する。 
 モーツァルトの音楽のように、何百年たってもマイケルの音楽や映像は愛され続けると思う。彼にとっては、そんなことよりも今の心の平和が欲しいかもしれない。しかし、これが天才の背負った宿命なのである。キング・オブ・ポップ。別格とはそういうことだ。 
 

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 80年代のライヴァルであったプリンスは「ライヴ」に活路を見つけ、レコード会社とのトラブルや変名騒動もくぐり抜け「音楽」へと純粋に帰っていくことが出来た。同じように今のマイケルには、「歌うこと」にもう一度向かい合う姿勢を持つことが一番必要だと思える。もちろん記録や現象も大事だ。しかし、ほんとうに心から気持ち良く歌っているマイケル・ジャクソンほど、幸せそうに歌を歌う人をぼくは知らない。子供のころも、大人になってもマイケルが歌うときの笑顔が大好きだった。かっこつけてシャウトする表情も。 

 今、マイケルこそ、マイク持ったマイケルに戻って欲しい。 
ぼくは本気でそう願っています。

(この文章は2006年に書きました、あとできちんと足します!) 


マイケルのコーナー、最後にYou Tubeでこれを! 
Michael Jackson Remember the time

ノーナリーヴス:西寺郷太のブログ「LIFE」