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きょうの社説 2009年7月11日
◎川勝知事が来県 ジャパンテントの縁を大切に
静岡県の川勝平太知事は97年以降、昨夏まで「ジャパンテント」のコーディネーター
や講師役などを、ほぼ毎年務めたほど、当地との縁が深い。北陸三県以外で、川勝氏ほど石川県の内情をよく知る知事は、ほかにいないだろう。小松と静岡が定期航路で結ばれる今月23日、川勝氏が今度は知事として初めて石川県 を訪れる。ジャパンテントや石川県観光創造会議などを通じて懇意にしている谷本正憲知事と握手を交わすことになろう。不思議な巡り合わせを思わずにはいられない。その縁を大切にして、静岡県と中身の濃い関係を築いていきたい。 小松便就航を機に、静岡に住む石川県関係者が県人会をつくり、金沢生まれの川井祐一 静岡鉄道名誉会長が会長に互選され、県ゆかりの静岡県在住者約150人が会員に名を連ねた。静岡に根を下ろした人々が「応援団」に名乗りを上げてくれたのも心強い。 地方と地方の交流は、どうしても隣県が中心になりがちだが、富山県は「京浜工業地帯 の父」と呼ばれる氷見市出身の浅野総一郎を縁に神奈川県との交流を始め、特産フェアの相互開催やご当地グルメ交流などで結びつきを強めている。遠方にあっても、うまく付き合えば、両県の観光や文化、経済にプラスの影響を与える可能性は十分ある。静岡便は石川県にとっては久々の地方路線であり、県ぐるみの幅広い交流を進めていきたい。 川勝知事は就任会見で、静岡−福岡便の搭乗率が年間70%を上回っても日本航空(J AL)から県への見返りがない搭乗率保証の仕組みについて、「筋が通らない」として見直しを表明した。能登−羽田間に導入されている全日本空輸(ANA)の搭乗率保証は、66%の搭乗率を超えるとANAが石川県に協力金を支払う内容である。石川県の事情をよく知っていたからこそできた指摘だろう。 もともと学者出身だが、知事としての行政経験が加われば、より実践的な行政運営や地 域活性化の知恵が付いてくる。知事になったからといって遠慮せず、「石川のブレーン」として引き続き協力を求めていきたい人材である。
◎鳩山代表の献金問題 「次期首相」らしからぬ説明
民主党の鳩山由紀夫代表は会見で、政権交代を実現した場合の政権運営方針などを示す
一方、自らの政治資金虚偽記載問題については謝罪したうえで「動機はまだ解明されていない。私にとっても、まどろっこしい話だ」と述べるにとどまり、疑念を晴らすには至らなかった。首相直属で長期的な国家戦略や予算の骨格を協議する「国家戦略局」を新設する考えも 示したが、このような衆院選後の具体的な政権運営は大いに語っていい。ただ、鳩山代表が「次期首相」を強く意識するほど頼りなく映るのは、自ら「まどろっこしい」と表現した献金問題に関する説明である。 西松建設の献金事件で小沢一郎氏が問われたのは、ゼネコンからの企業献金を偽装した とされる事件への責任にとどまらず、次期首相を狙う人物としてはあまりにもお粗末な説明能力ではなかったか。いま再び、この問題が突きつけられていることを鳩山代表も民主党も認識する必要がある。 岡田克也幹事長は鳩山代表の個人献金問題について「説明責任を果たした」と強調し、 鳩山代表が「一つの発想として考えられる」と言及した国会の政治倫理審査会への出席も「必要ない」と打ち消した。民主党は東京都議選後の13日にも内閣不信任決議案を衆院に提出する方針だが、麻生政権を追い詰めるカードも自民党から「鳩山隠し」と批判される始末である。 鳩山代表の献金問題は表面化して半月以上たったが、虚偽記載の動機や突出して多い匿 名献金など分からないことが多すぎる。七日の会見では経理担当者の元秘書が体調不良で面会できていないとして「推測の域を出ていない」とも語っている。野党党首ならまだしも、「次期首相」としては不安を抱かざるを得ない説明である。 反撃材料に事欠く自民党が、与謝野馨財務相らの献金問題を棚に上げ、民主党を「疑惑 のデパート」などと鬼の首を取ったように攻めたてる姿勢にも閉口するが、鳩山代表はこの問題の解決が政権交代へ近づく道と覚悟を決め、事実関係をできる限り早急に明らかにしてほしい。
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