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騒乱再発警戒、金曜礼拝の中止相次ぐ ウイグル族は不満

2009年7月10日21時3分

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 【ウルムチ(中国新疆(しんきょう)ウイグル自治区)=西村大輔、奥寺淳】大規模騒乱が起きた中国・ウルムチは10日、騒乱後初めての金曜礼拝の日を迎えたが、礼拝を中止するモスクが相次いだ。イスラム教徒のウイグル族が多く集まるだけに、騒乱再発を極度に警戒する当局の意向が働いているとみられる。ウイグル族の間では、神聖な宗教活動が失われたことに不満が渦巻いた。

 5日に騒乱があったウイグル族居住地区の北端にあるハンテングリ・モスク。午後2時半から予定されていた礼拝が中止となった。モスクの前で、武装警察部隊が銃や盾を構えている。同モスクの関係者は「安全が確保できないので礼拝を中止した。来週には再開できる。それまでは自宅で礼拝を続けてほしい」と苦渋の表情で語った。

 近くにいたウイグル族の20代の男性は「神聖な場所に、銃を構えた部隊が陣取っていることが許せない」。60代の男性は「金曜礼拝はイスラム教徒にとって大切な宗教行事。機会を奪われたのは悔しい」と小声で話した。

 別のモスクには、地元のイスラム教協会の「緊急通知」が張ってあり、「イスラム教徒の生命とモスクの財産の安全を保障し、テロ組織につけ込む機会を与えないため10日の礼拝を中止する」。7日に漢族に襲撃されたカシカジャマシ・モスクや、ウイグル族が多く住む地域の小さなモスクも礼拝を取りやめた。

 一方、漢族が多い市北部の六道湾モスクでは礼拝があった。直前から、警察がモスク前の通りを約1キロ通行止めにした。モスク内外で私服の当局者が警戒を続け、通常なら30分の礼拝が15分で切り上げられた。30代のウイグル族の男性は「当局が発表していない多数のウイグル族の死者に哀悼をささげた。不穏な状態が早く終わってほしい」。

 市内では多くの商店や会社は再開したが、「ウイグル族は自宅待機するよう指示された」(26歳の女性)という。

 ウルムチ市政府は10日、今回の騒乱の犠牲者に1人当たり弔慰金20万元(約280万円)、葬儀費用と遺族補償費をそれぞれ1万元(約14万円)ずつ支給することを決定。一方、地元紙によると、警察当局は9日夜から10日未明にかけ、騒乱の容疑者190人を拘束した。

 ウイグル族が大半を占める都市、カシュガルでは、観光地としても有名なエイティガール・モスクで厳戒態勢の中、礼拝が行われた。地元のウイグル族男性は「脇の小さな門だけが開放され、荷物をエックス線検査して中に通された。モスクの外では、武装警察の宣伝車が『民族の団結を』と唱えていた」としらけた様子で話した。

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