栄養価、甘み、うま味アップ 生とは違うおいしさを味わって
日差しが強くなり、風薫る5月。ベランダで「干し野菜」を作ってみよう。旬の野菜を天日干しすることで、うま味が増し、栄養素も凝縮される。さらに火の通りが早くなり調理時間も短縮できる-一石二鳥のエコ技だ。 (砂上麻子)
「干し野菜はベランダや室内のちょっとした日だまりがあれば簡単に作れます」-。自著「干し野菜のおいしいレシピ」(家の光協会)もある料理研究家の本谷恵津子さんが干し野菜を始めたのは10年ほど前。旅行先で野菜を買いすぎて食べきれなくなり、「捨てるのももったいない」と、自己流で野菜を干したのがきっかけという。
干し野菜は、大量に収穫される旬の食材を、腐らせずに使い切る昔ながらの知恵だ。干すことで、水分が抜けて、カルシウムや鉄分、食物繊維などの含有率が高くなり、甘み、うま味も増す。野菜に含まれている酵素が活性化し、うまみ成分が生成されるためと考えられている。本谷さんは「歯ざわりもよくなり、生の野菜とは違うおいしさが生まれる」と指摘する。
干し野菜の作り方はいたって簡単。
(1)日差しが強く、湿度の少ない日を選ぶ(2)野菜の水気をキッチンペーパーなどでふき取る(3)ベランダのほか、部屋の隅や出窓など日当たりがよい場所に、重ならないように並べる-だけだ。
干す時間は2-3時間から2-3日など、好きなだけ。「半日程度干した『半生状態』でも歯応えの変化は楽しめる」と本谷さん。日をまたぐ場合は夜露に当たらないように、室内に取り込み次の日また干す。「水気の多い野菜は、こまめにカビが生えてないかチェックする」のがポイント。
ダイコンやニンジンなどの根菜類は皮付きのまま輪切りに。ダイコンの葉も捨てずに細かく切って干せばみそ汁の具になる。ゴボウやショウガなど硬い野菜は、細切りや斜め切りにして干す。シイタケは軸ごとでOK。
種が多い野菜はカビが生えやすいので注意。トマトは輪切りに、キュウリは縦割りに、カボチャはくし形の薄切りにして、種を取ってから干す。
野菜を干す道具は竹ざるや金ざる、かごが適している。風通しがよく、野菜の両面が乾きやすい。鳥・虫よけに網目のボウルや食卓用の蚊帳をかぶせておく。
干し野菜はすぐに調理して食べるのが基本。長く保存する場合、2-3日かけてしっかり干す。密封容器に乾燥剤を入れて冷蔵すれば1カ月ほど持つ。
記者も半日かけて、トマトとカボチャの天日干しに挑戦してみた。トマトは水気が少し抜け、3割ほど小さくなった感じ。料理法は、焼く、煮る、炒(いた)めるなど生の野菜と基本的に同じだが、干すことで火が通りやすく、味がしみこみやすくなっており、少し薄い味付けでもOKだ。本谷さんお勧めのトマト炒めを作ってみたが、びっくりするほど火の通りが早かった。ガス・電気代の節約につながりそう。味のほうも、生で食べるより濃厚なうま味を堪能できた。
カボチャは乾燥して硬くなると予想していたが、表面が乾いているものの中は軟らかくなっていた。食べてみると、普段食べるより甘みが強い。干すことでかさが減って、普段より多めに食べられる。野菜の摂取不足も解消できそうだ。
(2009年5月11日)