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【国際】

ウイグル暴動「漢民族被害」発信狙う 地元政府が取材手配

2009年7月8日 朝刊

7日、焼き打ちされたウルムチ市内の自動車販売店=朝田憲祐撮影

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 【ウルムチ(中国新疆ウイグル自治区)=朝田憲祐】ウルムチ市で起きた大規模デモに対し、中国当局は「暴動」とみなして漢民族の被害をことさら強調している。在外ウイグル人組織「世界ウイグル会議」に扇動された「民族分裂分子」が漢民族を襲ったことを国民に印象づけ、当局が行ってきた少数民族政策の正当性をアピールする狙いがあるとみられる。

 地元政府は当局と市民の衝突直後から、市内のホテルに臨時プレスセンターを設置。取材バスを出したり、現場の映像や写真を提供している。

 市内ではウイグル族経営の商店や飲食店もショーウインドーを割られるなどの被害を受けているが、当局が取材手配をしたのは、焼き打ちに遭った漢民族経営の自動車販売店。報道陣が到着するや、待ちかまえた社長が取材に応じ、「ウイグル族に襲われ、展示していた三十数台が焼かれた」と被害状況を延々と語った。

 負傷者が入院している病院で、インタビューを受けたのもあらかじめ決められた漢民族の女性。報道陣に配布された死者や負傷者の写真に写っていたのは、いずれも漢民族とみられる被害者だった。

 一方、暴動の夜、帰宅途中に暴徒に殴られたというカザフ族の男性は「殴った相手は漢民族なのか、ウイグル族なのか分からない。両民族が殺気立っていたから」と話した。

 暴動による死者は156人。7日の記者会見で、民族別の内訳について聞かれた当局幹部は「調査中で分からない」と質問をはぐらかした。別の記者が「死者数が確定しているのに、分からないのはおかしい」とただしたが、幹部は無視を決め込んだ。

◆中国外務省「在米の活動家扇動」と主張

 【北京=池田実】中国外務省の秦剛副報道局長は7日の記者会見で、新疆ウイグル自治区のウルムチ市で発生した暴動について、「ウイグルの母」と呼ばれる在米のウイグル族人権活動家、ラビア・カーディルさんが扇動したとあらためて主張、強く非難した。ラビアさんが「平和的な抗議だった」などと主張していることについては、「多くの画像などから事実は明らかになっている。平和的デモと言うのは黒を白と言っているようなものだ」などと反論した。

 秦副報道局長はまた暴動を受けオランダの中国大使館やドイツ・ミュンヘンの領事館で6日、ウイグル族らによる投石で窓ガラスが割れるなどの被害があり、中国側が両国に再発防止などを要求したことも明らかにした。

◆「発端」工場衝突、当局が15人拘束

 【北京=池田実】中国新疆ウイグル自治区のウルムチ市で発生した暴動の発端とされる6月末の広東省の玩具工場でのウイグル族襲撃事件に関し、広東省韶関市の警察当局は、容疑者15人を拘束した。国営新華社通信が7日報じた。

 15人のうち、3人はウイグル族。また2人は、デマを流した容疑で逮捕された。当局はこれまでに玩具工場の工員ら400人を調査したという。

 この事件について、ウルムチ市の当局者は「広東省は妥当に処理した。事件は民族的、宗教的な対立ではない」などと強調している。

 

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