2009年7月9日18時40分
北九州市は9日、市立若松病院(若松区)で3月、同区の80代男性患者に鼠径(そけい)ヘルニア(脱腸)の手術をした際に患者の胃液が逆流して肺に入り、16日後に男性が死亡したと発表した。麻酔医が患者の胃の内容物の確認を怠ったことが原因の医療ミスだったとして、市病院局は麻酔医を口頭で厳重注意としたという。
同局の説明によると、男性は3月11日午後、開業医の紹介で同病院を受診。エックス線検査などで鼠径ヘルニアによる腸閉塞(へいそく)が起きていることがわかり、午後4時過ぎから緊急の開腹手術が行われた。手術開始から約30分後、口の中に胃液や胆汁が逆流してきていることに執刀医が気づいて処置したが、男性は胃液など強酸性の液体が肺に入ったことによる誤嚥(ごえん)性肺炎のため同27日に死亡した。
天野拓哉・病院長を委員長とする事故調査委員会が調査したところ、麻酔医が手術前にエックス線写真で胃に胃液などが残っていることを確認せず、適切ではない麻酔をしたことがミスの原因と判断した。麻酔医は50代の男性常勤医。当日は午前9時から別の2件の手術にもかかわっており、「緊急手術だったため、患者のエックス線写真を見る時間がなかった」と話しているという。
天野病院長はすでに遺族に謝罪し、損害賠償について話し合っているという。