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裁判員制度スタート:いわきの強姦致傷、示談受け不起訴に 対象裁判にならず /福島

 ◇被害者の意思尊重

 いわき市で女性(19)が暴行されてけがをした事件で、福島地検いわき支部は11日、強姦(ごうかん)致傷容疑で送検された同市内郷高坂町の男性会社員(31)を不起訴(起訴猶予)処分とし、釈放した。示談が成立した女性が告訴を取り下げたためだ。県内で行われる裁判員裁判の第1号かと注目されたが、適用されないことになった。【神保圭作】

 男性の容疑は、5月20日午前3時ごろ、いわき市内で、停車させた自分の乗用車内で女性を暴行。胸に7日間のけがをさせたとしている。男性は今月10日、女性に示談金として500万円を支払った。

 同地検の村上満男次席検事は、「強姦致傷は(起訴に被害者の告訴を必要とする)親告罪ではないが、被害者の意思を最大限尊重する必要があり、けがも比較的軽微なので不起訴とした」と述べた。男性側弁護士は「コメントすることはありません」と話した。

 これで、5月21日の裁判員制度スタート以降、6月11日夕までに発生した県内の裁判員裁判の対象事件は、福島市で自宅アパートに放火したとして、土木作業員の高橋清容疑者(57)が現住建造物放火容疑で逮捕された事件と、いわき市で知人を刺殺したとして、暴力団員の伊藤一仁容疑者(49)が殺人容疑で逮捕された事件の2件となった。起訴されれば、どちらかが県内初の裁判員裁判で審理される可能性が高い。

 ◇性犯罪被害者、どう保護

 裁判員裁判では、性犯罪被害者の住所や氏名、犯罪の具体的行為が明かされ、もう一度精神的傷を負う「2次被害」を受ける可能性が指摘されている。今回県内で起きた強姦致傷事件は福島地検が不起訴を決定したが、いつかは別の事件が審理されると考えられる。福島地裁は「できる限り配慮する」と話すが、具体的な基準があるわけではない。県内には性犯罪被害者専門の支援団体もなく、肉体的、精神的に傷を負った人のサポートが課題となっている。

 裁判員裁判で対象の性犯罪は▽強姦致死傷▽強制わいせつ致死傷▽強盗強姦▽集団強姦致死傷。

 福島地裁と同地裁郡山支部で開かれる裁判員裁判では、裁判員に犯罪に関する細かい内容が明かされる。裁判員には罰則付きの守秘義務があるが、守られるのか心配する人は多い。裁判員とはいえ一般県民に事件を知られたくない被害者は多いとみられる。

 また、初公判当日、担当裁判官は呼び出した裁判員候補者数十人に、事件の概要を説明する。裁判の公平を期すため、事件当事者の関係者は名乗り出てもらい、候補者から外すためだが、この時知ったことへの守秘義務はない。

 どこまで詳しく話すかの判断は、裁判官に委ねられている。同地裁総務課は「2次被害防止に努める」として、被害者の氏名や年齢は明かさず、住所は市町村単位で伝えるという。候補者には情報を口外しないよう求める方針だ。

 2次被害を心配し、全国の性犯罪被害者救済団体は最高裁や各地裁に、性犯罪を裁判員裁判から外し、できない場合は被害者と同じ地域に住む裁判員候補者を外すなどの配慮を求めている。

 県内には、総合的な活動をする「ふくしま被害者支援センター」(福島市)はあるが、県によると、性犯罪専門のサポート団体は把握していないという。活動に取り組むアジア女性資料センター(東京都渋谷区)は「各地で被害者が安心して相談できる場所の確保と、性暴力の知識を積んだ医師や看護師、カウンセラーの育成が必要」と話している。【神保圭作】

毎日新聞 2009年6月12日 地方版

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