2009年7月10日18時54分
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長崎市のアーケードを中国人が埋め尽くし、嵐のように去っていった――。「富裕層」と呼ばれる裕福な中国人を対象にした伊コスタクルーズ社のショートクルーズ(短時間航海)船が9日、長崎港に今年初めて寄港した。乗客約1200人を乗せ、このうち約800人が同市浜町のアーケード街にどっと押し寄せた。「特需」を願う商店街は歓迎ムード一色。10月までに19回のクルーズを予定、定員約2万6千人の来県が期待されている。
「熱烈歓迎」と書いて並ぶ赤い垂れ幕が目立った。午前10時、浜町のアーケード近くに確保された駐車場にバスが着くと、中国人客らは次々と商店街に流れ込んだ。
デジタルカメラを首からぶら下げた中国人客でアーケードは埋まった。何も知らずに来た50代の日本人女性は「中国に占拠されたみたい」。人気の電器店やドラッグストア、たばこ店では店員が筆談に身ぶり手ぶりを交えて慌ただしく応対していた。
県観光振興推進本部によると、中国で手に入りにくい商品をまとめ買いする人が多く、タバコ店の林田喜美栄さん(82)は「30箱も買っていく人がいた。今日だけは『日本たばこ店』です」。仕入れていた1週間分がわずか数時間で完売した。原爆資料館や平和公園を見学したという中国人の父(39)と息子(16)は「中国にない記念品を買って帰りたい」。午後2時の出航に間に合うよう足早に店を回っていた。
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富裕層の中国人を乗せた中国発日本向けのショートクルーズは06年から始まった。浜町の商店街は「活気を取り戻す起爆剤に」と期待する。
同年に長崎を訪れた中国人クルーズ客は平均で約4万3千円を落とし「上客」だったという。しかし、昨年まではバスで市内を移動する中国人らがアーケードに足を運ぶことはなかった。そこで一計を案じ、地元は約1200万円を投じて民間駐車場の協力などで最大7台分を確保し、中国語の案内板や案内所も整備。中国人留学生の通訳10人も配置した。