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大江健三郎氏の師の言葉 

大江健三郎氏が恩師から言われた言葉というのがとても好きです。
「小説というのは、健全な生き方をしてる人間が異常なことを書くこと」

そう、小説(芸術作品すべて)とは異常なことが書いてあるもの。
決して、健全なテーマではない。
でもその異常さを健全な視線で書くことが必要だとおっしゃってるのだろう。

逆にいえば、異常なことを異常な生き方のままで書いても読む者を感動させられないということだろう。
私はかなり異常な20年間を送ってきた。
20年間無言電話に振り回され、甘い期待を抱いて生きてきた。
深夜、明け方、午前午後問わず、何千回繰り返されただろう?
それに抵抗し、止める方法もあっただろう。
でも一番のネックは私の弱さ、誰かに期待する心、つまり依頼心というやつだった。

何をどういいわけしようが、期待してしまった。
こともあろうに、その無言電話の相手に。
一番不誠実な相手に!
不誠実な人に誠実だった私(自分なりにだが)。
それは異常な生き方だ。

でもそんな時期は必要なんじゃないかなと、
大江氏の恩師の言葉から勝手に推察してみる。

もう異常な時期は過ぎ去った。
今の私は健全な生き方をしている。
誰かに期待するなんてことはないからだ。
自分が頑張ることで、誠実な人たちをこっちに惹きつけようと決めている。
私は漫画作家だから、作品で。
神様からもらった異常な体験をエネルギーに変えて。

そういう意味で、本当によかったと思う。
異常な20年間を過ごせたことが。
また過ごし抜けたことが。
だって普通は経済的にどうにもならなくなるでしょうから。
それを耐え抜けたということは、やはりあれは運命だったのだと思う。

ただ、その間、誠実な人たちに不誠実なことをしてしまったのが辛いのです。
前項目の懐かしい方にもです。
いろんな方の友情にもです。
懺悔すべきはその方達に対してでした。
異常な生き方はオロカです。
オロカさの罰は充分受けなければなりません。
受け入れて頑張っていきます。


*******************************
…イ様

大江氏がノーベル賞に決定した時、NHKで立花隆氏との対談で語られたんです。
小説というのは健全な生活をしてる人が異常なものを書くことだというのが、恩師の言葉であるとした上で、
昔、若い頃の大江氏の作品を読まれた恩師がこうおっしゃったそうです。
”最近の君の小説は、何だか異常な人が健全なものを書こうとしてるように見える”

若い頃酒を飲み過ぎた?…と聞いた立花氏に対して、
酒よりは睡眠薬が…と大江氏は答えておられました。


私がドストエフスキーの「罪と罰」が好きなのも、大江氏のNHK講座での講義を聞いたからかもしれません。
バフチンのカーニバル論などからの、人間や群衆の愚かさ馬鹿馬鹿しさを深く考えた時期でもありました。
まずロシア語で原文を読めないわけですから、文学者の講義などから手探りで文学体験していくしかないんですけどね。
でも日本語だって同じ。芸術にははっきりした答えなんてないと思う。
それぞれが読書体験するだけ。
エベレスト山に登るようなものなんじゃないかな?正体なんてつかめない。
でも登った体験そのものが正体なのかもね。で、いつも違う。いつまでも飽きない。
人間と同じですね。


でも漫画はやはりもっとわかりやすいのがいいかもね。
作者の自分勝手な解釈でもね。
私も無言電話に怯えしかも期待するなんていう異常な時期を抜けきれなかった頃は、ちょっとわかりにくくなっていたかもと反省してるところです。
でもどんどんわかりやすく、面白くなってきたと思います。
あらやだ、こうしてる間にも描かなきゃいけませんよね。
反省!
今まだ下絵の最中です。


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え…様
コメントありがとう。
本当ですね。私も懐かしいです。
皆さんからいろんなことを教わりました。
あなた様からも。




[ 2009/07/08 18:32 ] 未分類 | TB(0) | コメント(-)
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プロフィール

Author:茶木ひろみ
(本名は現在非公開とさせてください)
1956年4月16日牡羊座
兵庫県神戸市生まれ
コーヒーとバタートーストとチョコレートケーキと麺類が好き。

職業は謎の漫画家。
幼少の頃から世界は恐怖と愛でできていると感じ、その矛盾を受け入れる生き方を続けている。
現在も描き続けている「銀の鬼」シリーズは、その矛盾がテーマとなっている。

ピアフやアダモをBGMに原稿を描くのが最高の幸せ。

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