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男同士の女性に関する噂話はセクハラになりうるか?

プレジデント7月10日(金) 11時30分配信 / 経済 - 経済総合
セクハラ被害者になって泣かないための、7つのポイント
「セクハラ」という概念の普及が進んだ結果、職場の女性の面前で失礼な発言をする男性は、昔に比べると減った。しかし、男性同士だとつい、たがが緩んで、特定の女性に対する性的な噂話などをしている人もいるのではないだろうか。そんな発言が仮に、何らかの形で女性の耳に入れば、セクハラに問われる可能性があるのか? 答えはイエス。
「もとの発言者だけでなく、それを伝えた人に悪意があれば、その人も責任が問われる可能性がある」(『女は男のそれをなぜセクハラと呼ぶか』(角川書店)の著者でもある、山田秀雄弁護士)

「その場だけ」の話のつもりでも、その後に不特定多数の者へ伝播する可能性がある以上はセクハラになる、というところは、名誉毀損罪や侮辱罪における法的議論に似ている。
 実は、セクハラ行動は、通常、民法上の不法行為(故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害する行為)として、慰謝料などの損害賠償を命じられたり、強制わいせつ罪などの刑法犯として罰せられるなど、一般的な法規のもとで処断される。それらの裁判の判決理由においても、ある行為がセクハラかどうかの判断基準は「諸事情を総合的に勘案」としか述べられないことが多い。
 ただし、「常識的に見て、相手が嫌がるのが相当かどうか」という主観が重視されることは確かだ。

 山田弁護士によると、職場のセクハラは大きく2つに分類される。まず「対価型」は、たとえ無意識的でも、相手にプレッシャーを与えることによって、性的な対象とすること。上司と部下という間柄などで生じやすい。次に「環境型」は、性的な言動によって、職場環境の悪化を招くことである。
 冒頭の例にある「性的な噂話」は、環境型セクハラに属する。これが厄介なのは、「セクハラ判断で相手の主観が重視される傾向が強い」という点だ。そもそも被害者の主観が重視される傾向のあるセクハラだが、「環境型」は「対価型」と異なり、社内での立場関係などといった前提が特になくても生じうることから、主観重視の傾向はさらに強い。
 この主観重視という基準は、多くのセクハラに苦しむ女性を助けてきたが、問題点もある。まず、純粋な恋心が不法行為とされてしまう可能性がある点。男性上司が年の離れた女性部下に恋をし、電話やメールでアプローチするも、相手からはそれがセクハラだと責任を問われ、上司が自ら命を絶ってしまったケースが実際にあった。たとえ、常識の範囲で、異性としてのアプローチを行ったとしても、上司と部下という立場関係に加えて、部下からの訴えがあれば、法的責任を問われる可能性があるのだ。

 また、セクハラを過剰に意識すると、「萎縮効果によって、かえって社内のコミュニケーションが阻害されるという問題もある」(同)
 職場の女性に「綺麗だね」など、容姿に関する言葉をかけたり、肩を軽く叩いたりすることはセクハラとなる可能性があるが、一方でこうした褒め言葉や励ましで喜ぶ女性社員がいることも確かだ。
 加えて、被害者の主観で正否が決まる点を悪用し、会社幹部などを陥れる目的で、「セクハラ事件」を起こすといった事例も見られるようになった。「セクハラという概念がインフレ化し、世間での価値や信頼性が下がると、本当に保護しなければならない被害者を救えなくなる危険性がある」(同)。

 では、デートに誘いたい異性が職場にいる場合は、具体的にどうすればいいのか。野暮で無粋かもしれないが、「無理に誘ってるわけじゃないからね」など、相手の自由意思を確認する作業が不可欠だ。もし誘いを断られても、そのことを理由に職場で無視したり、配置転換したりするような不利益を相手に与えることは厳禁である。


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司法ジャーナリスト
長嶺超輝=文

ライヴ・アート=図版作成


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  • 最終更新:7月10日(金) 11時30分
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