「テンペスト」競演 日本の古典演者がシェークスピアを料理
7月7日16時24分配信 産経新聞
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文楽で演じられる「天変斯止嵐后晴」(写真:産経新聞) |
9日から新潟市中央区のりゅーとぴあ能楽堂、18日から東京・南青山の銕仙会(てっせんかい)能楽研修所で上演されるのは、りゅーとぴあのアソシエイトディレクターを務める栗田芳宏が演出、出演する「テンペスト」。テンペストとは嵐の意味で、絶海の孤島を舞台に、ミラノ大公プロスペローやその弟のアントーニオらによる謎めいた物語が展開される。
栗田はこれまでも「マクベス」や「リア王」などのシェークスピア作品を能舞台で上演してきたが、今回は津村禮次郎(れいじろう)がこのシリーズで初めての能楽師として参加、空気の精、エアリエル役を務める。
「能は14世紀、シェークスピアは16世紀で、能が200年勝っている。どちらも言葉を大切にした野外劇であり、似ているところもある」と津村。特別な空間である能舞台の隅々まで熟知した津村が加わることで、シェークスピアの中でも複雑な構造をもつこの作品が上演できるという。
「栗田さんは、テンペストの舞台で成功した例はあまりないと話していたが、私が能の面(おもて)を付けるエアリエル役で参加することで、妖精たちの存在をうまく見せたい」と話す。能と同様に舞台装置は使わず、音楽も笛と大鼓(おおつづみ)だけ。シンプルな和の空間と音で、難解な芝居をわかりやすくする。
一方、文楽版の「テンペスト」は「天変斯止嵐后晴(てんぺすとあらしのちはれ)」のタイトルで、18日から大阪・日本橋の国立文楽劇場で上演される。平成4年に文楽へ移入し、中世の日本の物語に置き換えたもので、今回は美術や脚本を大幅に変更。本格的な文楽舞台での公演は初めてとなる。
「前回は英国公演のために急いで書き上げて、推敲(すいこう)もできなかった。再演のために読み直して、エピローグの場面を加えることにした。ラストは文楽にはない手法で、太夫ひとりにスポットを当てる演出になる」と脚本・演出の山田庄一は言う。初演のときは抽象的な舞台装置を使ったが、今回は文楽の古典的な装置での上演となる。
妖精や怪獣なども登場するが、「日本にはない概念なので、(人形を)作るときに苦労した。妖精は宙乗りを使って表現する」と山田。人形遣いの吉田玉女も「スケールの大きさを出せればいい」と意欲をみせていた。
能楽堂版「テンペスト」は新潟公演が9〜12日、東京公演が18〜20日。TEL03・3466・0944。文楽版「天変斯止嵐后晴」は大阪公演18日〜8月5日の後、東京・隼町の国立劇場小劇場で9月5〜23日。TEL0570・07・9900。
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最終更新:7月7日16時24分