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私はの家には生まれたときから犬がいた。
父親が（ほとんど副業として）狩猟をしていたからだ。
私の父親は農家の次男坊だが、父方の男の兄弟、親戚はすべて猟をする。
冬場は農作業が出来ないからだ。簡単なことだ。
私が生まれた頃にいたのはちーという名の柴犬だそうだ。
赤ん坊の私と一緒に写真に写っているがこの犬に関しては記憶がない。
その次はイングリッシュポインターのオスＲと、柴犬の２代目のちー。
Ｒが死に、つぎに同じくポインターのオスとメス２頭。
この３頭がいなくなってからは甲斐犬が来た。
そのあとは父は狩猟をやめたので猟犬ではない何頭かの犬がいる。
残念ながら婚家では商売上の理由で犬は飼えない。
生まれたときから犬とともにあったが、気がつくと犬といない
時間のほうが長くなりつつある。
一番長く一緒にいたのは２代目の柴、ちーだ。
保育園から１０代の後半まで。私達はいつも一緒にいた。
とはいえ、彼女にとっての主は私の父だ。
父の言うことには絶対服従だが私のいうことはほとんど聞かなかった。
小学校に上がってからえさやりと散歩は私の仕事だったが、
ちーは「私があんたのいうこときいてるのはおとーさんに頼まれてるからよ、
勘違いしないでね！」という態度がありありだった。
立場は自分の方が上、と彼女は信じて疑っていないようだった。
ある日、あまりに言うことをきかず小馬鹿にした態度に腹を立てた私は
狭い路地でワザと彼女の鎖をはずし、通せんぼをした。
「自由に走っていきたいでしょ。でもさせないよ。できるもんなら通ってみな！」
当然のことだが、彼女は私の脇をすり抜けてかけていった。
「つかまえないとお父さんに怒られる！」あわてて後を追いかける。
当然追いつけない。転びながら泣きながら追いかけた。
随分さきにいた彼女は、心配そうに何度も振り返る。
そして私が来るのをまっていて、近くにきたらまたつかまらないように
距離をとって先をいく。随分長い間追いかけっこをしてたが
門限になったので私はなくなく家に帰った。
夜遅く父が帰ってきて晩酌をしていると庭の盆栽の隙間からきら、と光る
ガラス玉のような目がのぞき、父に愛想を振りまいていた。
それ以来私も家庭内の順位を認め、彼女は私の姉になったのだ。
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