2009年7月9日0時7分
資本市場は、米国経済の指標に一喜一憂しているものの一時の悲愴(ひそう)感はなくなった。世界経済が最悪期を脱したとの見方が増えてきたからだろう。この結果、各国の異例と言える今回の経済危機対策の出口戦略が議論され出した。
今回の危機収拾のための中央銀行による利下げや量的緩和、政府による大量の国債発行を伴った財政出動、一部銀行や一般企業の国有化など、各国の事情により異なってはいるものの異例の政策だ。あくまで一時的な措置であり、景気が底を打ち回復に向かえばこれらの政策は撤収されるはずだ。これが出口戦略である。
景気回復前にこれら政策を解除すれば金利が上昇し景気の底割れリスクすら生じる。逆に景気が回復しているにもかかわらず解除が遅れれば財政赤字が膨張し過ぎたり、インフレのコントロールが不可能になったりするリスクも生じてしまう。適切なタイミングに出口戦略を始める必要がある。
今回最も困難な出口戦略は米国やEUである。米国は連邦準備制度理事会のバランスシートがリーマン・ショック前の2倍にも膨らみ、しかも国有化の動きは銀行のみならず一般企業にまで及んでいる。この状態を元に戻すのはそう簡単ではないだろう。一方、EUも各国の経済に強弱が見られ統一した財政政策がとれず、EU内の戦略をどう統一するか困難を極めよう。
日本は一番最後に戦略を始めることになるだろう。やはり日本の景気は外需に依存しており、世界経済に左右されるからだ。しかも米国より出口戦略を早めれば、大きな円高の動きとなり景気回復に水を差すことになる。ここはじっくり世界経済の行方や各国の出口戦略を待つことが得策だろう。(QJ)
◇
「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。