2009年07月08日 社説
[与那国部隊配備]
軍事前のめりでは不安
防衛省は与那国島への陸上自衛隊配備を検討している。浜田靖一防衛相がきょう、現地を視察する。台湾や中国との領土問題がある尖閣諸島に近いセンシティブな地域の防衛力配備は慎重になるべきだ。軍事論を優先するだけでは、めまぐるしく変化する国際情勢にそぐわない。
面積が狭い与那国島では訓練場の確保ができないため、実動部隊を配備するのは難しいだろう。周辺海域を航行する船舶の動向などを監視できるレーダーサイトを整備し、数十人の小規模部隊を想定しているようだ。
浜田防衛相は「南西諸島の防衛のあり方は重要だ」と配備に積極的だ。年内に策定する次期中期防衛力整備計画(中期防、2010~15年)に盛り込むことを念頭に置いた発言だろう。
中国外交部の秦剛報道副局長は「日本の関連する措置が、本地区の平和と安定に役立つものであることを希望する」と反応した。通信部隊であり侵略的な意図はない―と説明しようとも、部隊の前方配備が周辺諸国との関係に波風を立てることは容易に想像できる。
中国のインターネット書き込みサイトには、「武力でたたかないと、日本を説得するのは難しい」「琉球を取り戻せ」といった激しい論調もあるという。
与那国への自衛隊配備は5年前の中期防策定時にも取りざたされた。冷戦終結による新たな安保環境への対応として防衛力の「南方シフト」が強調された。今回の与那国配備もその延長にある。
ただ、あのころは将来における台湾海峡での武力衝突の可能性を懸念した議論だった。中国政府は台湾の独立阻止を狙った「反国家分裂法」を制定、「台湾独立」に対して武力行使も辞さない構えを示すなど、緊迫した情勢があったからだ。
日米同盟を基軸に中国の軍事力強化をけん制しながら、政府は朝鮮半島や台湾海峡などで想定される紛争への対処を防衛政策の柱にしてきた。この考え方はいま修正を求められようとしている。
馬英九台湾総統は6日、ハワイ大学内の東西センターで講演し、北東アジア諸国に対し「外交的休戦」を呼びかけた。中台関係は「統合せず、独立せず、武力を行使せず」という従来のスタンスを維持することにより、安定化を目指すとした。
「おもしろいことに、北京と関係改善すると、諸外国も(中国への)遠慮なしに台湾へ接近してくれる」
北朝鮮の核開発問題についても中国の協力なしではもはや語れない。「G2(米中)」の協調が北東アジアの安保維持に不可欠となっている。
日本が中台危機を想定した従来発想の「南方シフト」を推し進めると、むしろ「KY(空気を読めない)」と言われかねない。
外間守吉与那国町長は過疎化対策として、自衛隊誘致を防衛省に要請している。同町は台湾との国境交流を進めてきたはずだが、台湾側の反発を買うようなことがあっては信頼を損ねてしまう。
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