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【2009都議選】

とうきょうご当地争点<7>スカイツリー 『金のなる木』 活用策は

2009年7月10日

建設中の東京スカイツリーがそびえる街並み=東京都墨田区で

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 「景気が底打ちしたというが、全くそんな感じがしない」。中小の町工場が集まる墨田区でばね製造業を営む男性(43)は深いため息をついた。今年に入って自動車関連の仕事はゼロ。家族経営の合資会社は危機にひんしている。「スカイツリーで地元経済に勢いがついてくれれば」。祈るようにつぶやいた。

 ツリー建設は経済活性化のチャンスとみる同区内の鼻息は荒い。地元観光協会は任意団体から社団法人に生まれ変わり、民主導でツリー効果を拡大させようと躍起だ。区は〇六年度にまとめた基本計画に、周辺の川や道路の整備費など総額七十八億円のツリー関連事業を盛り込んだ。〇七年度には道路の電線地中化も追加し、予算は百億円以上に膨れ上がっている。

 「区民の暮らしが大変な時期。福祉などほかに予算の使い道があるのでは」。共産新人の阿藤和之さんはツリーを冷ややかに見詰める。「ツリーそのものに反対はしないが、今のまちの活性化につながるかは疑問。観光客が地元商店街で買い物をしてくれるとは思えない」と主張する。

 他の候補は積極的にツリーを活用する姿勢だ。自民新人桜井浩之さんは「インフラ整備は区だけではできない」と都の支援を働き掛ける構え。「地域の大きなイメージアップになる」と期待を込める。民主現職小沢昌也さんは震災や戦災の惨禍を伝える復興記念館とツリーを結ぶ観光ルートを提案。「平和の発信基地にしたい」と話す。公明新人加藤雅之さんは「多くの観光客が地元にお金を落としてくれる。ツリーは大歓迎だ」と話し、区民の優先雇用やオープン前の区民無料招待を要望する。

 土地区画整理で立ち退きを余儀なくされる商店からは不満の声も聞かれるが、建設に反対する目立った動きはない。着工から一年。“金のなる木”への期待は、工事が進むにつれて高まっている。

 ただ、「どうすればタワーを生かせるか」という各論に踏み込むと、意見はさまざまでまとまりがない。議論の芽も今後、吹き出しそうだ。 =おわり

 (この企画は、中里宏、比護正史、松村裕子、小川慎一、北川成史、小林由比、岡村淳司が担当しました)

 <東京スカイツリー> 東武鉄道が東京都墨田区押上に建設する電波塔。完成すれば世界トップレベルの高さの建物になる。地上デジタル放送のほか観光施設として活用。区は開業後に年間550万人が訪れ、880億円の経済効果があると試算。

 ◆墨田区(定数三)

阿藤和之38 党地区委員長  共新 

桜井浩之43 (元)墨田区議   自新 

加藤雅之44 党都政策局次長 公新 

小沢昌也54 党都議会役員  民現<1>

 (届け出順)

 

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