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【産経抄】7月9日
このニュースのトピックス:産経抄
「駆け込み乗車は、やめてください。電車の遅れの原因になります」。朝、満員電車が駅に着くたびに、駅員が大声で、乗客のマナー違反を注意している。その口調が、以前よりきつくなったような気がする。それだけ、乗客の起こすトラブルが、目立っているのだろう。
▼2日夜には、神奈川県鎌倉市のJR大船駅のホームで、もみ合いをしていた男性2人が電車に接触し、頭を打って死亡する事故があった。電車から降りる際に、一人の肩がもう一人にぶつかったという、些細(ささい)な出来事がきっかけのようだ。同じような事故が、どの電車に起こってもおかしくない。
▼毎朝の通勤が苦痛なのは、満員電車の窮屈さだけではない。他人への寛容さを失い、潤いのまったく感じられない雰囲気のせいだ。これが電車の中だけなら、まだ救いがある。どうしても耐えられないのなら、極端な話、乗らなければいい。
▼しかし、時代の空気そのものの発火点が低くなったとすれば、逃げ場はどこにもない。「誰でもいいから、殺したかった」。大阪市此花区のパチンコ店で、ガソリンをまき、マッチで火をつけて4人を殺害した41歳の男は、またも、耳をふさぎたくなるような供述を行った。
▼きのう、千葉県野田市の路上では、45歳の女が、ハローワークに勤務する女性にガソリンをかけて火をつけ、重傷を負わせた。「仕事が見つからず、自暴自棄になった」と話しているという。身勝手な犯罪者の心のなかで散った憎悪の火花は、たちまち燃え広がって、かかわりもない人たちまで火だるまにしていく。
▼五木寛之さんによれば、自殺者が11年続けて3万人を超えている日本は、「心の内戦」のなかにある。戦火の広がりを、防ぐ手立てはないものか。
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