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社説

ウイグル騒乱 根深さ見えた民族格差(7月9日)

 中国西部の新疆ウイグル自治区での騒乱が、民族抗争に発展しかねない様相を見せている。

 中心都市のウルムチで行われたウイグル族のデモをきっかけに、対立する漢民族も1万人以上がデモ行進し、一部は暴徒化して商店を襲った。

 死者は少なくとも150人以上に上り、多数の負傷者が出ている。

 こん棒やシャベル、ナイフなどを持った集団が、ウルムチの街を殺気だった表情で練り歩く。そんなテレビ映像が世界に流れた。

 主要国首脳会議(G8サミット)参加のためイタリアを訪れていた胡錦濤国家主席は予定を切り上げ、慌ただしく帰国した。極めて異例のことであり、中国政府が事態を深刻に受け止めていることを示している。

 これ以上の流血は防がなければならない。中国政府には強圧的なやり方ではなく、騒乱を速やかに収拾してもらいたい。ウイグル族、漢民族の双方にも冷静な対応を求めたい。

 広東省の玩具工場で今年6月、ウイグル族の従業員が漢民族の従業員に集団暴行され、死亡した。今回の騒乱はこの事件に対する抗議デモがきっかけだったとされる。

 背景には根深い民族問題がある。

 新疆ウイグルは日本の4倍以上の面積に約2100万人が暮らす。トルコ系のウイグル族は約940万人、漢民族は約800万人。石油や希少金属などの資源に恵まれる。

 18世紀にこの地域が清朝に征服されて以来、独立運動がくすぶる。

 中国政府は新疆ウイグルへの漢民族の移住を奨励する、いわゆる「漢民族化政策」を進めてきた。

 この結果、高給の優良企業の社員は漢民族が多くを占めるなど、民族間の経済格差が深刻になった。言語や信仰についての政策にも、ウイグル族は不満を募らせていたようだ。

 55の少数民族を抱える中国では、一つの民族の騒乱が他の民族に飛び火し、体制をも揺るがしかねない。

 それだけに、中国当局は武力制圧に頼ってきた面も否めない。

 しかし、力で押さえ込むだけでは騒乱はまた繰り返されるだろう。

 中国は今や米国、日本に次ぐ世界3位の経済大国だ。昨年秋以降の経済危機で、その巨大な市場と生産力は、世界経済を回復に導くけん引役として期待されている。

 そうした責任を担う以上は、人権や自由など人類の普遍的な価値を軽視する姿勢は許されないだろう。

 この10月、中国は建国60周年という大きな節目を迎える。この機に、従来の民族政策も問い直すべきではないか。少数民族が差別を感じることのない社会をつくる。それが問題の本質的な解決につながるはずだ。

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